通りすがりの俺様
「お疲れ様です~」
いずるが社内を歩いていると、向こうから矢端が来た。
いや、違う、といずるは思う。
「……秀さんですね?」
「すごい、よくわかったね」
と秀は笑う。
「侵入したんじゃないよ。
今日はほんとに仕事」
秀は来客用の入館証を鞄から出して見せてきた。
「……社内の人、混乱しません?」
「めちゃ親しげに挨拶される」
と秀は笑っている。
そのために入館証外してるのか……。
「そういえば、聞いたんだけど」
「はい」
「お金出したら、君んち、住んでいいんだって?」
おかしな話になっている……。
「矢端秀」
と一鷹の声が後ろからした。
振り返ると、一鷹が小走りにやってくるところだった。
「何故、ここに?」
「仕事。
よくわかったね」
「矢端が今朝着てったシャツと微妙に色が違うから」
「隆二と夫婦か」
と秀は笑っていた。
そう。
結局、みんな、一鷹の借りてくれた家に住んでいるのだ。
兄はいないことの方が多いが。
まあ、大きな家なので、同じアパートに住んでいる、くらいの感覚だった。