通りすがりの俺様
 


「……悪い人の方、矢端さんかな」
といずるは呟く。

 今日は秀も来て、みんなで夕食をとることになり。

 こんなデカいテレビ、普通の家にいる?
と思うようなテレビの前。

 こんな広いリビング、普通の家にいる?
と思うようなリビングで、みんなで鍋をしていた。

 湯気がのぼっていく広い天井を見上げながら、
 この家ではなんだか人間が小さい、といずるは思う。

 それぞれ家賃は入れているが、おそらく、この屋敷の一部屋分の賃料にも満たないだろう。

「どっちも悪いやつだろ」
と一升瓶を横に置いた一鷹が言った。

「そうですねえ。

 秀さんはちょっと悪い人。
 矢端さんもちょっと悪い人。

 でも、秀さんは矢端さんにしてやられそうな感じっていうか」

 なにそれ、と秀が苦笑いしたところで、

「ところで、はい!」
と矢端がいきなり挙手をした。

「共同生活についての意見なんだけど」

 ちょっと学級委員っぽい矢端さんらしい、と思いながら、ゆずポン酢の染みたしらたきを齧っていると、
「議題『玄関ホール脇の廊下の蛾について』」
と言い出した。 

「玄関ホールの側の廊下の隅に、蛾が死んでるんだけど、ずっと」
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