通りすがりの俺様
「そうなのか? 知らなかったな」
 上とか遠くだけ見て歩きそうな一鷹が言う。

「ああ、いたねえ」
と兄が言い、

「そういえば、いましたけど……」
とその妹が曖昧に呟く。

 まあ、気づいてはいた。

 そこを通るたびに、

 蛾が死んでる……
 蛾が死んでる……

 とは思っていたのだが。

「忙しいときにばっかり見るんで、ああ、と思いながら、いつも通り過ぎちゃってたんですよね」

 わかるわかる、玄関周辺だもんなと兄が頷いた。
 矢端が言う。

「……僕、蛾だけは苦手なんで。
 誰か片付けてくれないかなと思って見てたんだけど。

 誰も片付けないよね」

「週末には、うちから掃除の人が来てくれるから、片付けてくれるだろ」
と一鷹が言うと、秀が、

「ここは基本、怠け者しか住んでないんじゃない?
 僕を雇ったら?」
と鍋奉行をしながら言っていた。

 彼は意外にこまめに働く。
 実際、鍋の準備もほとんどしてくれていた。
 



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