通りすがりの俺様
野菜の多いチャーハンもパリパリの餃子も、どろっとしているがサッパリしているラーメンもいつも通り美味しいし。
気の合う……
いや、この店でしか話さないんだが、友人もいる。
いい休日だな、といずるは思ったが、ふと、鍋をしていたときの秀の言葉が頭をよぎった。
「でもさ、あれだよな。
意外に身近な場所に敵が潜んでるかもしれないよな。
敵だといずるちゃんに知られないように、あらかじめ、ひっそり近づいてたりして――」
「僕の敵は今、目の前にひっそりともせずいるんだけどねえ」
と矢端が秀を見ながら言っていたが。
「身近な場所に敵って、誰です?」
といずるが訊くと、
「そうだなあ。
水内とか?」
と秀は言う。
「そういえば、いきなり呑み会で肩を叩かれましたっ」
「待てっ。
お前にとっては唐突だったかもしれないが。
俺はずっとお前を見てたんだからなっ」
「あと、全然、ひっそりとしてないよね。
近づき方が不自然極まりないし」
と矢端が笑いながら、一升瓶から酒を注いでいた。
「もっと自然に身近にいる、一番信用できる相手とかかも」
「はっ。
俺かっ」
と兄が言い、
「……その想定だと、お兄ちゃんだけは絶対ない」
と言ってしまった。
秀よりも信用できないからだ。
そんな話をふと思い出し、いずるは考えた。
――まさかっ。
この人もごく自然に近づいてきた敵っ。
そう思ったとき、彼が言った。
「今日は思いもかけず出会ってビビッた。
気を抜いていたからな」
「え?」
彼が自分を見つめて言う。