通りすがりの俺様
腹ごなしにホテルの一階を歩いていると、ドレスがたくさん飾ってある場所に出た。
もちろん。
このホテルの結婚式場のドレスだ。
どれもこれも素敵だなあ、とガラス越しに眺めていると、ひょい、と若い店員さんが出てきた。
「着てみられますか?」
と笑顔で訊いてくる。
「えっ?」
どうも結婚前のカップルだと思われたようだった。
「あらっ、一鷹くんじゃないのー」
奥から年配の女性スタッフが現れた。
一鷹の母の大学の同級生で、若松笙子という人だった。
「この方が噂の一鷹くんの好きな人?
まあ、綺麗ねえ」
……もうご友人の間で、噂になっているのですか。
まあ、息子が家を借りてやったとか言ったら、それはなりますよね……。
「来て来て」
と店の中に呼び込まれる。