通りすがりの俺様
「あなた、身長もあるし、上品だから。
 入ったばかりの、これ、いいんじゃないかしら。

 あっ、これもいいわね。
 こっちは、うちのパンフレットの表紙にしてるドレスなんだけど」
とあっという間にドレスが集められていく。

「よし、着てみろ」

「待ってくださいっ。
 私、結婚するとか言ってませんけどっ?」

「気に入ったドレスがあったら、結婚してもいいかなとか思うかもしれないだろ」
と一鷹が無茶を言った瞬間、さっきの若いスタッフ、飯田(いいだ)が畳みかけるように言ってきた。

「ただいま、ドレスをご予約された方には、このチョコレートをプレゼントしております」

「えっ」

 素敵な包みに入ったそれは、いずるの大好きな高級チョコレートだった。

 いや、しかし、チョコのためにドレスを借りるとか。

 絶対、買った方が安いしっ。

 物語のヒロインが着ているような、白いレースがふわっと上にかかった紫のドレス。

 ふわふわの素材がまるでうさぎの毛のように見える、くすんだピンクのドレス。

 ハイネックでキリッとした感じのダークグリーンのドレス。

 そして、正統派な真っ白のウエディングドレスなどがずらっと並べられている中。

「ここ、どうぞ」
 微笑む飯田に試着室の白い扉を開けられる。

 ここで、いえ、結構です、と言える女はいないのではないだろうか……。



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