通りすがりの俺様

 


「ヤバイ。
 式場も決まってしまいました」

「そうだなあ。
 まあ、こうなると思ったよ」

 そう言いながら、二人で庭を歩く。

 ラーメンを食べたいという一鷹の一言からはじまった休日。

 何故、こんなことに……と思いながら、いずるはホテルの庭園を歩いていた。

 夕暮れのいい風が吹いている。

 この風に乗って、いっそ、何処かに行ってしまいたい、といずるは空を見上げた。

 ホテルの外プールから子どもの声が聞こえてくる。

「私、サメに喰われてる!」

 ……大変ですね。

「それにしても、トントン話が進みすぎて怖いです」

 はは、と一鷹は笑い、
「豚骨に連れ去られても困るしな」
と言う。

 それだと豚に連れ去られるみたいなんですけど……。

 ケンちゃんのことかな? と思った。

「なんか食べて帰るか?」
「でも、家で食べた方が落ち着くし……」

「美味いしな」
と笑う二人は、秀を当てにしていた。

「よし、連絡しとこう。
『いい肉買って帰るから』」
と一鷹は秀にメッセージを送っている。

 普通、そういうのは妻に送るものでは、と思いながらも、いずるも黙ってそれを眺めていた。


 

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