通りすがりの俺様
 佐保子はそちらをチラと見て、ついでに出てきてしまった矢端も見て。

 それでもなお、怯まずに言った。

「私、色々と調べ上げたのよ」

 矢端が、暇なの? という顔しながら聞いている。

「いずるが持っている土地、高く売れるのに売り渋っているのよね?」

 佐保子がその辺のことを知っているのは、藤間から聞いていた。

 藤間の母が、佐保子に話しかけられ。

 いずるの親友で全部知っている、という感じに話を振ってきたので、土地の件をしゃべってしまったそうなのだ。

「その土地に建つビルの建築を請け負っているのが、水内さんの実家の会社なのよ」

「だから?」
と一鷹が訊く。

「水内さんの実家からすれば、かなりの大きな仕事。
 それで、水内さんは頑なに売ろうとしないいずるを懐柔して結婚し、その土地を手に入れようと――」

「水内さんはそんなことしないわ」
「……ずいぶんと信用してるのね」

 ええ、といずるは頷いた。

「水内さんのやり口はもうわかっているから。
 水内さんなら、そんなまどろっこしいことはしないわっ。

 なんでもすぐに金で解決するに決まってる!」

「すごい揺るぎない自信だね」
と矢端が苦笑いしていた。
 



< 219 / 307 >

この作品をシェア

pagetop