通りすがりの俺様
 


「もしかして、俺の後をつけていたのはお前か」

 一鷹は佐保子にそう訊いていた。

「そうですっ。
 ずっとあなたを見つめていたので、危うく惚れそうになりましたが、踏みとどまりましたっ」

 いや、監視してて惚れないでっ、
といずるは一鷹黒幕説より衝撃を受ける。

「特に道を歩いているとき、水内さんが塀の上で並走していた猫に話しかけ。

 立ち止まった猫と語りだす姿とか。
 きゅんと来てしまいましたっ」

 ――なにそれ、見たいっ!

「猫にきゅんと来たわけではなく……?」
といつの間にかいた秀が笑って言う。

 今日はちゃんと入館証をつけていたので、誰にでも見分けがつくようだった。

「お前はなんのためにそんなことをしているんだ。
 いずるのためじゃないだろう」

「だって、いずるが矢端さんや秀さんと楽しく暮らしていると聞いて、悔しくてっ。

 いやいや、水内さんとくっつくんじゃないのっ?
と思って周辺を探っていたら、水内さんのヤバイ話ばかり出てきてっ」

「いや、ヤバイのはお前の妄想だ。
 うちの家の事業と俺は関係ないし。

 あとそんな息子を使ってまで危険な橋を渡らないといけないほど、うちの会社は困窮していない」

 まあ、そうですよね。
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