通りすがりの俺様
 


「ただいま」
といずるは一鷹たちの待つ家に帰った。

 キッチンとリビングが続きになっている部屋には、明るい光が灯っていた。

 ガラス扉を開けると、なにかがコトコト煮えている感じの、いい匂いの蒸気が、ふわっといずるを包む。

 男たちは何故かキッチン前のダイニングテーブルで芋や大根をむいていた。

「……どうしたんです?」

「おでん作ったんだよ、簡単にその辺の物放り込んで」
と秀が眉をひそめて言ってくる。

「そしたらさ、適当に練り物とか卵とか入れただけのやつだからって念押ししたのに。

 こいつらが、おでんには小芋だとか、じゃがいもだとか、大根がないとおでんじゃないとか」

 ただ、おでんの素入れただけの適当な煮物だって言ったじゃんっ、
とキレながら秀もじゃがいもをむいている。

「しかも、何故かこいつら、食べて一杯やりながら、むいてるんだよ。
 野菜入れるころには、練り物も卵もなくなってるだろっ!?」

 兄まで慣れない手つきで、大根をむいているのを見ながら、ははは、といずるは笑った。

「荷物置いてきたら、私も手伝いますよ」

 そう言って、行こうとすると、
「いずる」
と小芋を手にしている一鷹が振り向いた。

 水内さんは小芋必須なおでんなんだな、とちょっと笑ったとき、
「なにかあったか?」
と訊いてきた。
< 261 / 307 >

この作品をシェア

pagetop