通りすがりの俺様
荷物を置いて着替え、手を洗ったいずるは腕まくりして、キッチンに向かった。
腕まくりしたのは、野菜をむきまくろうという気合いのあらわれだけではない。
バン、と扉を開けて、いずるは言った。
「犯人捕まりましたっ。
いや、犯人解放してもらいましたけどっ」
突然の展開に、一鷹が小芋を落とす。
兄は、ただむくのが下手で大根を落としていた。
おっとっ、と大根を拾いに屈む兄を見ながら、
兄っ。
家族なので、少しは私の事件にも興味を持ってっ、と思ったとき、
「なんですぐ言わなかった?」
と一鷹が訊いてきた。
「……その、犯人が捕まったら、ここでの生活も終わりだな、と思って、なんとなく……」
一鷹がこちらにやって来る。
「犯人が捕まったら終わりなら、俺が新たな犯人を作るぞ」
そうだねえ、と矢端が笑って言う。
「新たな犯人、僕も何処からか連れてくるよ」
と。
「僕も何処からか連れてくるね」
と秀も笑った。
「……犯人、多すぎですよ」
といずるは苦笑する。
でも、確かに、今度の犯人がすべてではない。