通りすがりの俺様
その夜、いずるが部屋にいると、誰かがノックしてきた。
「はい」
と言うと、一鷹が、
「犯人か、矢端たちだったらどうするんだ、返事をするな」
と言いながら扉を開ける。
じゃあ、なんでノックしたんですか……。
「水内さん、よく、私の部屋がわかりましたね。
どんどん移動してってるのに」
いずるの部屋にたどり着けたらキスできるという謎の都市伝説(?)がこの家の中で広まっているので、まだ逃げていたのだ。
まさか、ほんとうにやりはしないだろうとは思うのだが。
……みんな、軽いノリでやってきそうな雰囲気あるからな、
といずるは怯えていた。
彼らにとっては、たくさんのキスの内のひとつかもしれないが。
私は、そういうのはちょっと苦手なんで……と思ったとき、一鷹が眉をひそめて言ってきた。
「……なんだ、そのラスボスが、
『よくぞここまでたどり着いたな』って言うみたいなの」
もっとロマンティックなこと言ってくれ、と言う。
いや、あなたも言わないじゃないですか、と思っているうちに、一鷹は部屋に入ってきた。
誰よりあなたが危険人物ですよっ、
と思いながら、いずるがちょっと後退したとき、テーブルの上に置いていた卓上カレンダーが落ちた。
拾ってくれた一鷹が、
「なんか書いてたのか?」
と近くにあるペンを見て言ってくる。
「ああ、例のパーティの日にちを――」