通りすがりの俺様
「……実家に行こうって言ったのはどっち?」
といずるは訊いた。

「……燁子(あきこ)だが」

「お兄ちゃん、一人暮らしで邪魔も入らないのに?」

「えーと、それ。
 グルなんじゃ」
と矢端は言ったが、

「いいから、助けてくれ。
 明日までに土地の権利書を持ってこいって言われたんだ」
と兄は言う。

 そこにいた全員で顔を見合わせる。

 秀が当然のように言った。

「権利書渡してもあまり意味はないとは思うけど。

 でも、どちらにしても、渡すことないよ。
 絶対、全部詐欺だから」

「これが詐欺だったとしても、俺はあいつを愛してるんだっ」

 ちょっと感動したよ、兄っ。

「俺はあいつを助けたいっ。
 たとえ、妹を売り渡してもっ!」

 今出かけた涙が引っ込んだよ、兄っ。

「すまん。
 間違えた。

 妹の持つ土地を譲り渡してもっ」

 ……最初のが本音では、と思っていると、ポン、と後ろから現れた一鷹が、いずるの肩を叩いた。

「その交渉、俺が行こう」
「水内さん……」
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