通りすがりの俺様
「でも、仲間に事態が進まないから、こっちは他の奴に任せて、もう他の男を騙せと言われて。

 ……私、このままあなたを騙していたいと願ったの。

 そしたら、みんなが強硬策に出てしまって」

「燁子っ」
と夜の商売をしていそうな派手なナリの男たちがどやどやと入ってくる。

「この家のセキュリティはどうなってんのかな?」
と矢端が呟いていた。

「裏切ったなっ」
と言う男たちに、いずるがリビングの隅にあったカゴを投げつける。

「それが欲しいんでしょうっ?
 あげるわっ」

「いらねえよっ。
 スーパーのカゴなんてっ」

 持ってるしっ、とチャラついた男が言う。

 ……持ってるんだ?
 そんなホストみたいな外見で。

 意外と堅実だな、といずるが思ったとき、

「あれっ? これ……」
と矢端が気がついた。

 スーパーのカゴには下にお惣菜の汁などがこぼれないようにか、カゴと同色のピンクのトレーがついているのだが。

 そのトレーが投げた弾みにとれていた。

 そこにピンクの袋があるのに気づいたらしい。

 いずるはそれを拾って開けると、男たちに向かって突きつけた。

「これがいるんでしょうっ!?」
「なんだ、そのゴキブリの糞まみれ!」

「それが権利書よっ」
「ちゃんと保管しろよっ」

「私がもらったときからそうなってたのよっ。
 長い間、金庫の裏に落ちててわからなくなってたみたいで。

 つまり、私はその、落ちてたの拾ったら、土地の権利書だった。
 これも生前分与に使おうか、という程度の適当なものをもらったはずだったのよっ」

「……金持ちの発想、怖いね」
「土地の権利書、その辺に落ちてる?」
と秀と矢端が後ろでぼそぼそ話している。
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