スパダリ御曹司はスパダリ偽装妻を溺愛で囲い逃がさない
 それから北斗さんは、ヴィラの企画意図やコンセプト、さらに今計画しているサービスについて、テーブルに資料を広げて概要を詳しく説明してくれた。

「間取りはこれ。サービス開始前に、スタッフの導線確認やサービス提供手順確認のために、琴子さんにも現地まで何度か赴いてもらうことになると思う」
「わかりました。移動は大川電鉄で一本なので、そんなに大変ではないと思います。都内に近い観光地ですし」

 すると北斗さんはうん、とひとつ頷いた。

 それからも話し合いを重ねていると、あっという間に外が夕闇に包まれていく。
 北斗さんはちらりと腕時計を確認し、「そろそろ時間だな」と呟いた。

 彼の肩書は確か、次期アミューズメント事業部長。きっと、忙しい人なのだろう。
 それなのにわざわざ時間をつくり、今後の方針について真剣に話し合ってくれた。きっとそれほど、この事業が大切だということだろう。

 改めて、身が引き締まる思いだ。私は荷物を片づける彼に、背を正して告げた。

「北斗さん、引き続きこの場所をお借りしていてよろしいでしょうか。ここで先ほどの案について、もう少し中身を練っていたく――」
「君も俺と一緒に、来るんだよ」

 北斗さんの言葉に、私はうん?と首をかしげる。

「この後、懇親パーティーがあるんだ。君にも、それに出席してもらいたい。君の勤務を午後からにしたのも、そのためだから」

 きっと、この事業に関わるパーティーなのだろう。ともにヴィラをつくり上げる仲間に、挨拶をしておくのは大切だと思う。

「わかりました、すぐに片づけます」

 だが手元の資料をまとめながら、ふと気づく。

「この格好で、問題ないでしょうか?」

 二十八歳。いわゆるアラサーの私が、新卒のようなリクルートスーツ。このままでは、パーティーにそぐわないのではないか。
 だが、北斗さんはくすりと笑って言う。

「それなら、問題ないよ。君には俺の帯同者として、今から着飾ってもらうから」

 彼はなぜだか楽しそうな顔をしている。だが、私は耳を疑った。

 私が、彼のパーティーの帯同者……!?

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