スパダリ御曹司はスパダリ偽装妻を溺愛で囲い逃がさない
オリオンレジデンスホテル東京のヘアサロン。結婚式を挙げる花嫁や著名人がパーティー前に訪れるこの場所で、なぜか私は今、ヘアメイクされている。
鏡に映った自分はメイクケープをかけられ、まるでてるてる坊主のよう。だけど、ケープの下にシルクの淡いピンクのカクテルドレスを着ているのだから、落ち着かなくて仕方ない。
あの後、北斗さんは私を連れてハイヤーに乗り、オリオンレジデンスホテル東京の従業員口へやってきた。といっても、いつも入る場所とは異なり、地下駐車場から繋がる場所だ。
おかげで知り合いには誰にも会わずに中に入ることができたのだけれど、私は事態がのみこめず内心おろおろしていた。
北斗さんはそんな私を連れてドレスサロンでさっとドレスを選ぶと、そのまま「このドレスと彼女に合うものを」と、華麗にスタッフに頼んだ。
このホテルで扱うドレスはどれも一流のもの。慌てて止めようとしたが、「これも君の仕事のうち」と言われ、さらに彼はそのままどこかへ行ってしまった。
仕事と言われたら返す言葉もない。私が帯同者でいいのかという疑問と、御曹司の帯同者であるには綺麗でなければならないというプレッシャーが胸に渦巻き、ぐるぐると考えているうちにヘアメイクが終わってしまった。
アップにされた髪と煌びやかなメイクをまとった私は、いつもの私とはまるで別人だ。
自分でも感激してしまうほどのプロの仕上がりに後者の疑問は解消されたが、前者はまったく解消されていない。本当にこのまま、彼の帯同者としてパーティーに出席するのだろうか。
「とても素敵だね、琴子さん」
北斗さんの声がして、振り向く。彼は先ほどまでのビジネススーツ姿ではなく、黒色のタキシードを着ていた。首元のボウタイがとても似合っていて、そこにいるだけで彼から高貴な雰囲気を感じる。
まるで〝鷲見様〟として接していた時のようだ。
「あ、ありがとうございます……」
あの時はホテルマンとお客様として接していたから、なんとも思わなかった。だけど今、私はドレス姿だ。それだけで、どぎまぎしてしまう。
つい顔を伏せると、彼がこちらにやってきた。
「そんなに不安そうな顔をしないで。行こうか」
北斗さんはそう言うと、自然に私の背に手を置いた。
にこにこと微笑むスタッフを背後に、逃げることも叶わずサロンから連れ出される。サロンのスタッフに知り合いがいなくてよかったと思いながらも、まだあの疑問は解消されていないと私は口を開いた。
「本当に、北斗さんの帯同者が私でいいのでしょうか?」
煌びやかなホテル通路を歩きながら、私は小声で彼に聞いた。
「今日の懇親会には、オリオン・グラン・ヴィラに出資している企業の役員やオリオングループの幹部も集まるんだ。俺は生憎アメリカ帰りで、パートナーがいない。君が帯同者を務めてくれれば、君をヴィラのクオリティ・マネージャーだと紹介するのにも、ちょうどいいだろう?」
エスコートされたまま微笑まれ、私は視線を落として考える。
確かに、それは一理ある。だけどそれはつまり、今日オリオングループの幹部にも会い、挨拶をするということ。途端に緊張が押し寄せてくる。
「君の応対力があれば、大丈夫。それにもし困っても、今日は俺が隣にいるから」
その声に顔を上げると、いつもの優しい笑みを返される。それが、今日はとても頼もしく感じた。
鏡に映った自分はメイクケープをかけられ、まるでてるてる坊主のよう。だけど、ケープの下にシルクの淡いピンクのカクテルドレスを着ているのだから、落ち着かなくて仕方ない。
あの後、北斗さんは私を連れてハイヤーに乗り、オリオンレジデンスホテル東京の従業員口へやってきた。といっても、いつも入る場所とは異なり、地下駐車場から繋がる場所だ。
おかげで知り合いには誰にも会わずに中に入ることができたのだけれど、私は事態がのみこめず内心おろおろしていた。
北斗さんはそんな私を連れてドレスサロンでさっとドレスを選ぶと、そのまま「このドレスと彼女に合うものを」と、華麗にスタッフに頼んだ。
このホテルで扱うドレスはどれも一流のもの。慌てて止めようとしたが、「これも君の仕事のうち」と言われ、さらに彼はそのままどこかへ行ってしまった。
仕事と言われたら返す言葉もない。私が帯同者でいいのかという疑問と、御曹司の帯同者であるには綺麗でなければならないというプレッシャーが胸に渦巻き、ぐるぐると考えているうちにヘアメイクが終わってしまった。
アップにされた髪と煌びやかなメイクをまとった私は、いつもの私とはまるで別人だ。
自分でも感激してしまうほどのプロの仕上がりに後者の疑問は解消されたが、前者はまったく解消されていない。本当にこのまま、彼の帯同者としてパーティーに出席するのだろうか。
「とても素敵だね、琴子さん」
北斗さんの声がして、振り向く。彼は先ほどまでのビジネススーツ姿ではなく、黒色のタキシードを着ていた。首元のボウタイがとても似合っていて、そこにいるだけで彼から高貴な雰囲気を感じる。
まるで〝鷲見様〟として接していた時のようだ。
「あ、ありがとうございます……」
あの時はホテルマンとお客様として接していたから、なんとも思わなかった。だけど今、私はドレス姿だ。それだけで、どぎまぎしてしまう。
つい顔を伏せると、彼がこちらにやってきた。
「そんなに不安そうな顔をしないで。行こうか」
北斗さんはそう言うと、自然に私の背に手を置いた。
にこにこと微笑むスタッフを背後に、逃げることも叶わずサロンから連れ出される。サロンのスタッフに知り合いがいなくてよかったと思いながらも、まだあの疑問は解消されていないと私は口を開いた。
「本当に、北斗さんの帯同者が私でいいのでしょうか?」
煌びやかなホテル通路を歩きながら、私は小声で彼に聞いた。
「今日の懇親会には、オリオン・グラン・ヴィラに出資している企業の役員やオリオングループの幹部も集まるんだ。俺は生憎アメリカ帰りで、パートナーがいない。君が帯同者を務めてくれれば、君をヴィラのクオリティ・マネージャーだと紹介するのにも、ちょうどいいだろう?」
エスコートされたまま微笑まれ、私は視線を落として考える。
確かに、それは一理ある。だけどそれはつまり、今日オリオングループの幹部にも会い、挨拶をするということ。途端に緊張が押し寄せてくる。
「君の応対力があれば、大丈夫。それにもし困っても、今日は俺が隣にいるから」
その声に顔を上げると、いつもの優しい笑みを返される。それが、今日はとても頼もしく感じた。