スパダリ御曹司はスパダリ偽装妻を溺愛で囲い逃がさない
オリオングループが貸し切っていたのは、ホテル内では一番広い宴会場『朱鷺の間』だった。扉が開くと、そこにはすでに何人もの人がいて、静かに談笑したりお酒を嗜んだりしている。
入社時に研修で一度だけ来たことがあるが、その時は使われていなかった。だから余計にそこにいる人の数に、圧倒されてしまう。
場違い感が否めない。だが、彼の帯同者をしっかりと努めなくては。そう思い、微笑を浮かべて彼の隣に立つ。
北斗さんはボーイからシャンパンを受け取り、私に手渡してくれる。それを受け取り、彼と小さく乾杯した。
「まずは、父のところへ行っていいかな。それから、色々と挨拶を――」
「あら北斗さん。ごきげんよう」
耳元に聞こえる彼の言葉を遮って、彼を呼ぶ女性の声がする。北斗さんがそちらを振り向き、私も慌ててそちらに向き直った。
「おや、『ステイスタイルジャパン』蛇原社長のご令嬢。我が社のパーティー、楽しんでいらっしゃいますか?」
北斗さんの言葉に、脳の奥から必死に引き出す。
ステイスタイルジャパンは、確か観光・トラベル系のWEBサービス会社で、比較的新しい企業だ。この企業のサイトからオリオンレジデンスホテルの予約はできないのかと何度か問い合わせを受けたことがあるが、オリオングループは提携していなかったはずだ。
「あなたがいないから、全然楽しくなかったわ。……ところでそちらの方、初めて見る顔だけれど。どちら様?」
急に鋭い視線を向けられ、思わずぴくりとしてしまう。だが私は仕事だと、微笑を浮かべて堂々と対峙した。
「初めまして、私オリオングループが開発中の、新規ヴィラのクオリティ・マネージャーを務めさせていただいております樫江と申します」
会釈すると、彼女の口角がにこりと上がった。
「よかったあ。北斗さんがパーティーにパートナーを連れてくるなんて初めてだったから、びっくりしちゃった。お仕事の関係の方だったのね」
彼女は上目遣いで北斗さんにそう言うと、満面の笑みを向け北斗さんの右腕に手を伸ばす。
「ねえ北斗さん。婚約者でもないなら、私とパーティーを回りましょうよ。こんな時までお仕事の相手と一緒なんて、息が詰まるでしょう?」
ご令嬢はそう言いながら、唐突に私と北斗さんの間に割って入ってきた。それで、私は蚊帳の外へと押し出される。
「それに、こんな一般社員よりも私と一緒にいた方が印象もいいわよ。なにせ、今後日本のトラベル界を担う『ステイスタイルジャパン』の娘なのよ?」
迫るご令嬢に、北斗さんは王子の微笑を浮かべて口を開いた。
「申し訳ない。我がオリオングループはまだ、ステイスタイルジャパンと提携する気はありませんので」
丁寧な口調だったが、ご令嬢はむっと眉をつり上げた。
北斗さんがそう言ったのはきっと、彼女をパートナーとして連れていると、オリオングループがステイスタイルジャパンと提携したと思われるからだろう。だがおそらく、オリオングループはそれを望んでいない。
ご令嬢は北斗さんに好意を寄せているようだ。わかりやすい彼女の態度や表情に、どうにかして彼を助けるべきだと思う。
だけど、こういう場は初めてだ。どう立ち回ろうか考えている間にも、ご令嬢と北斗さんはやりとりを続ける。
「オリオングループがお父様の案をのんでくだされば、今以上に儲かるに決まっているのに」
ご令嬢がそう言って、北斗さんにすり寄ろうとした。だが北斗さんは、伸ばされたご令嬢の腕を華麗に躱す。
入社時に研修で一度だけ来たことがあるが、その時は使われていなかった。だから余計にそこにいる人の数に、圧倒されてしまう。
場違い感が否めない。だが、彼の帯同者をしっかりと努めなくては。そう思い、微笑を浮かべて彼の隣に立つ。
北斗さんはボーイからシャンパンを受け取り、私に手渡してくれる。それを受け取り、彼と小さく乾杯した。
「まずは、父のところへ行っていいかな。それから、色々と挨拶を――」
「あら北斗さん。ごきげんよう」
耳元に聞こえる彼の言葉を遮って、彼を呼ぶ女性の声がする。北斗さんがそちらを振り向き、私も慌ててそちらに向き直った。
「おや、『ステイスタイルジャパン』蛇原社長のご令嬢。我が社のパーティー、楽しんでいらっしゃいますか?」
北斗さんの言葉に、脳の奥から必死に引き出す。
ステイスタイルジャパンは、確か観光・トラベル系のWEBサービス会社で、比較的新しい企業だ。この企業のサイトからオリオンレジデンスホテルの予約はできないのかと何度か問い合わせを受けたことがあるが、オリオングループは提携していなかったはずだ。
「あなたがいないから、全然楽しくなかったわ。……ところでそちらの方、初めて見る顔だけれど。どちら様?」
急に鋭い視線を向けられ、思わずぴくりとしてしまう。だが私は仕事だと、微笑を浮かべて堂々と対峙した。
「初めまして、私オリオングループが開発中の、新規ヴィラのクオリティ・マネージャーを務めさせていただいております樫江と申します」
会釈すると、彼女の口角がにこりと上がった。
「よかったあ。北斗さんがパーティーにパートナーを連れてくるなんて初めてだったから、びっくりしちゃった。お仕事の関係の方だったのね」
彼女は上目遣いで北斗さんにそう言うと、満面の笑みを向け北斗さんの右腕に手を伸ばす。
「ねえ北斗さん。婚約者でもないなら、私とパーティーを回りましょうよ。こんな時までお仕事の相手と一緒なんて、息が詰まるでしょう?」
ご令嬢はそう言いながら、唐突に私と北斗さんの間に割って入ってきた。それで、私は蚊帳の外へと押し出される。
「それに、こんな一般社員よりも私と一緒にいた方が印象もいいわよ。なにせ、今後日本のトラベル界を担う『ステイスタイルジャパン』の娘なのよ?」
迫るご令嬢に、北斗さんは王子の微笑を浮かべて口を開いた。
「申し訳ない。我がオリオングループはまだ、ステイスタイルジャパンと提携する気はありませんので」
丁寧な口調だったが、ご令嬢はむっと眉をつり上げた。
北斗さんがそう言ったのはきっと、彼女をパートナーとして連れていると、オリオングループがステイスタイルジャパンと提携したと思われるからだろう。だがおそらく、オリオングループはそれを望んでいない。
ご令嬢は北斗さんに好意を寄せているようだ。わかりやすい彼女の態度や表情に、どうにかして彼を助けるべきだと思う。
だけど、こういう場は初めてだ。どう立ち回ろうか考えている間にも、ご令嬢と北斗さんはやりとりを続ける。
「オリオングループがお父様の案をのんでくだされば、今以上に儲かるに決まっているのに」
ご令嬢がそう言って、北斗さんにすり寄ろうとした。だが北斗さんは、伸ばされたご令嬢の腕を華麗に躱す。