スパダリ御曹司はスパダリ偽装妻を溺愛で囲い逃がさない
この結婚は、私が提案した、偽装の関係だ。心から祝福してくれている伯父を騙すようで、申し訳ない。
ごめんなさい、伯父さん。お母さん、お父さん、伯母さんも……。
胸の内で懺悔していると、北斗さんの大きな手が私の背に優しく触れた。それで、背を丸めてしまっていたことに気づく。
こんなではいけない。やると決めたのだから、やり通さなければ。
自分を叱責し、慌てて背を正した。それから北斗さんに目くばせすると、彼は優しい笑みのまま頷いてくれる。私は彼に頷き返し、伯父に切り出した。
「実は、婚姻届の証人になってほしくて」
「もちろんだ」
伯父の言葉に、北斗さんが鞄から婚姻届けを取り出す。伯父の前に広げると、伯父は少しだけ震える手で、丁寧に記してくれた。
その様子を見ていると、再び罪悪感がこみ上げてくる。
結婚するということは、自分たちだけの問題じゃない。周りの人たちを巻き込むことであるし、偽装結婚ということはそれだけたくさんの人たちを騙すということでもある。
自分から提案したくせに、こんな気持ちになるなんて。
複雑な気持ちを隠すように笑みを浮かべ、証人の署名欄を埋めていく伯父を見守る。やがて書き終えた伯父はほっと肩の力を抜き、北斗さんに婚姻届を差し出した。
「琴子ちゃんはしっかり者ゆえ、ひとりで抱え込んでしまうところがある。私が言うのも変な話だが、どうか少しでも、甘えさせてあげてください」
「もう、伯父さんやめてよ」
私はそう言ったが、北斗さんは「わかりました」と笑顔で丁寧に答えてくれた。
伯父はその後従業員に呼ばれてしまい、これ以上長居するのも申し訳ないと私たちは樫江精機を後にした。
今は北斗さんのセダンに乗り込み、次の目的地である彼の実家へと向かっている。
「いい方だな」
下町の懐かしい風景の中を走りながら、北斗さんが言う。
「はい。孤児になった私を受け入れてくれただけでなく、親の会社まで継いでくれました。本当に、何度感謝してもしきれません」
大変な苦労をかけたはずなのに、私のためにわざわざ忙しい間を縫って時間をつくり、北斗さんに挨拶してくれた。結婚を祝ってくれたし、証人にもなってくれた。別れ際には、彼の目尻にほんのりと涙まで見えた。
私はなんて、恵まれているのだろう。
だから同時に、心苦しい。あんなにしてくれた伯父を、騙しているなんて。
私は暗くなりそうな思考を振り切るため、一度深呼吸をして北斗さんに告げた。
「北斗さん、ありがとうございました。次は、私が頑張ります」
そう意気込んだものの、車はどんどんと都心の喧騒を離れ、一等地へと入っていく。窓外に見える一軒一軒の敷地の広さに驚き、途端に緊張がこみ上げた。
オリオングループの会長の住む家。豪華じゃないわけがない。
車窓に映った自分が肩をつり上げていることに気づいて、私は慌てて力を抜く。すると、そんな私に北斗さんがくすりと笑った。
「そんなに緊張しないで。父とはすでに会っているわけだし、母もあんな感じだから」
ごめんなさい、伯父さん。お母さん、お父さん、伯母さんも……。
胸の内で懺悔していると、北斗さんの大きな手が私の背に優しく触れた。それで、背を丸めてしまっていたことに気づく。
こんなではいけない。やると決めたのだから、やり通さなければ。
自分を叱責し、慌てて背を正した。それから北斗さんに目くばせすると、彼は優しい笑みのまま頷いてくれる。私は彼に頷き返し、伯父に切り出した。
「実は、婚姻届の証人になってほしくて」
「もちろんだ」
伯父の言葉に、北斗さんが鞄から婚姻届けを取り出す。伯父の前に広げると、伯父は少しだけ震える手で、丁寧に記してくれた。
その様子を見ていると、再び罪悪感がこみ上げてくる。
結婚するということは、自分たちだけの問題じゃない。周りの人たちを巻き込むことであるし、偽装結婚ということはそれだけたくさんの人たちを騙すということでもある。
自分から提案したくせに、こんな気持ちになるなんて。
複雑な気持ちを隠すように笑みを浮かべ、証人の署名欄を埋めていく伯父を見守る。やがて書き終えた伯父はほっと肩の力を抜き、北斗さんに婚姻届を差し出した。
「琴子ちゃんはしっかり者ゆえ、ひとりで抱え込んでしまうところがある。私が言うのも変な話だが、どうか少しでも、甘えさせてあげてください」
「もう、伯父さんやめてよ」
私はそう言ったが、北斗さんは「わかりました」と笑顔で丁寧に答えてくれた。
伯父はその後従業員に呼ばれてしまい、これ以上長居するのも申し訳ないと私たちは樫江精機を後にした。
今は北斗さんのセダンに乗り込み、次の目的地である彼の実家へと向かっている。
「いい方だな」
下町の懐かしい風景の中を走りながら、北斗さんが言う。
「はい。孤児になった私を受け入れてくれただけでなく、親の会社まで継いでくれました。本当に、何度感謝してもしきれません」
大変な苦労をかけたはずなのに、私のためにわざわざ忙しい間を縫って時間をつくり、北斗さんに挨拶してくれた。結婚を祝ってくれたし、証人にもなってくれた。別れ際には、彼の目尻にほんのりと涙まで見えた。
私はなんて、恵まれているのだろう。
だから同時に、心苦しい。あんなにしてくれた伯父を、騙しているなんて。
私は暗くなりそうな思考を振り切るため、一度深呼吸をして北斗さんに告げた。
「北斗さん、ありがとうございました。次は、私が頑張ります」
そう意気込んだものの、車はどんどんと都心の喧騒を離れ、一等地へと入っていく。窓外に見える一軒一軒の敷地の広さに驚き、途端に緊張がこみ上げた。
オリオングループの会長の住む家。豪華じゃないわけがない。
車窓に映った自分が肩をつり上げていることに気づいて、私は慌てて力を抜く。すると、そんな私に北斗さんがくすりと笑った。
「そんなに緊張しないで。父とはすでに会っているわけだし、母もあんな感じだから」