スパダリ御曹司はスパダリ偽装妻を溺愛で囲い逃がさない
やがて獅子内家の皆に見送られ、北斗さんの車に乗り込む。
「マンションの件、驚かせたよね。すまない」
獅子内家の敷地を出たところで、北斗さんが口を開いた。
「実は、アメリカから帰国したばかりで自分の家がなくて、実家から通うのも遠いから、会社に寝泊りしていてね。会社の近くに部屋を借りようと思っていたところ、君が俺に偽装結婚を申し出てきた。それで、君と一緒に住む部屋を、兄さんに相談していたんだ。兄さんはオリオングループ管轄の不動産を、いくつか持っているから」
「でも、私が申し出たのは偽装の結婚で、まさか同居までとは考えていなくて」
慌てて言うと、北斗さんはハンドルを握ったままくすりと笑う。
「君はホテルクラークとヴィラのクオリティ・マネージャーの二足わらじで今もすでに頑張っている。自宅がホテルや本社の徒歩圏内にあったら、嬉しいと思わない?」
彼はそこまで言うと、一度こちらをちらりと見た。にこっと微笑む口角にどきりとしてしまい、慌てて視線を逸らす。だが、彼はそのまま続けた。
「それに、俺はこの偽装結婚で君に負担をかけたくはない。無理を言ってクオリティ・マネージャーを頼んだ身だ。ホテルクラークも同時に務める君が、今の部屋でひとりで生活を維持するのは大変なんじゃないかな」
「それは、自分でなんとか調整します。仕事の二足わらじも偽装結婚も、どちらも自分から申し出たことなので」
事実だ。私がやると言ったのだから、自分でなんとかするのは当たり前。同居という形で、彼に負担をかけるわけにはいかない。
それなのに、彼は私に反論する。
「この結婚は〝利害一致〟の偽装結婚。もし琴子さんに過度な負担がかかってしまったらそれはフェアじゃないだろう」
「ですが、そもそも部屋をお借りすること自体が――」
「それは気にしなくていい。兄が勝手に用意した、だから部屋に関しては俺の負担はゼロ」
私の反論を遮って、北斗さんは爽やかな笑みのままそう言った。
なるほど、彼はこの〝偽装結婚〟をビジネスのように捉えているらしい。今のところ、彼の負担はゼロ。私だけが二足わらじという負担を被っていると彼が捉えているのなら、それはそれで納得できる。
もし徒歩でホテルにも本社にも通勤できるとなれば、それは私にとってもありがたい。クオリティ・マネージャーとしての仕事は、本社で夜遅くまでに及ぶこともあるのだ。
同居の提案には彼の気遣いも含まれているのだろう。だったら、それは同居中に返していけばいい。
私はそう納得し、彼に迷惑をかけず、さらに彼に住みよい部屋にしようと誓って口を開く。
「……わかりました。よろしくお願いします」
すると、北斗さんは満足そうに微笑んだ。
「マンションの件、驚かせたよね。すまない」
獅子内家の敷地を出たところで、北斗さんが口を開いた。
「実は、アメリカから帰国したばかりで自分の家がなくて、実家から通うのも遠いから、会社に寝泊りしていてね。会社の近くに部屋を借りようと思っていたところ、君が俺に偽装結婚を申し出てきた。それで、君と一緒に住む部屋を、兄さんに相談していたんだ。兄さんはオリオングループ管轄の不動産を、いくつか持っているから」
「でも、私が申し出たのは偽装の結婚で、まさか同居までとは考えていなくて」
慌てて言うと、北斗さんはハンドルを握ったままくすりと笑う。
「君はホテルクラークとヴィラのクオリティ・マネージャーの二足わらじで今もすでに頑張っている。自宅がホテルや本社の徒歩圏内にあったら、嬉しいと思わない?」
彼はそこまで言うと、一度こちらをちらりと見た。にこっと微笑む口角にどきりとしてしまい、慌てて視線を逸らす。だが、彼はそのまま続けた。
「それに、俺はこの偽装結婚で君に負担をかけたくはない。無理を言ってクオリティ・マネージャーを頼んだ身だ。ホテルクラークも同時に務める君が、今の部屋でひとりで生活を維持するのは大変なんじゃないかな」
「それは、自分でなんとか調整します。仕事の二足わらじも偽装結婚も、どちらも自分から申し出たことなので」
事実だ。私がやると言ったのだから、自分でなんとかするのは当たり前。同居という形で、彼に負担をかけるわけにはいかない。
それなのに、彼は私に反論する。
「この結婚は〝利害一致〟の偽装結婚。もし琴子さんに過度な負担がかかってしまったらそれはフェアじゃないだろう」
「ですが、そもそも部屋をお借りすること自体が――」
「それは気にしなくていい。兄が勝手に用意した、だから部屋に関しては俺の負担はゼロ」
私の反論を遮って、北斗さんは爽やかな笑みのままそう言った。
なるほど、彼はこの〝偽装結婚〟をビジネスのように捉えているらしい。今のところ、彼の負担はゼロ。私だけが二足わらじという負担を被っていると彼が捉えているのなら、それはそれで納得できる。
もし徒歩でホテルにも本社にも通勤できるとなれば、それは私にとってもありがたい。クオリティ・マネージャーとしての仕事は、本社で夜遅くまでに及ぶこともあるのだ。
同居の提案には彼の気遣いも含まれているのだろう。だったら、それは同居中に返していけばいい。
私はそう納得し、彼に迷惑をかけず、さらに彼に住みよい部屋にしようと誓って口を開く。
「……わかりました。よろしくお願いします」
すると、北斗さんは満足そうに微笑んだ。