スパダリ御曹司はスパダリ偽装妻を溺愛で囲い逃がさない
 その他、朝食用の食材や調味料も買い込み、スーパーを後にする。買い物袋は彼に軽やかに奪い取られ、私は財布とスマホを入れた小さなバッグを肩にかけて帰宅した。

 帰宅後、すぐに米を洗って炊飯器にセットする。ニンジンやジャガイモを切っていると、なぜかダイニングから彼がひょっこり覗いてきた。

「あの、なにか……?」

 顔を上げると、にこっと微笑まれる。

「あまり人が調理しているところを見たことがないから、見てみたくて。迷惑だったら向こうにいるよ」

 その言葉に、つい包丁を落としそうになった。

 彼はオリオングループの御曹司。『夕飯は私がつくります』なんて言ってしまったが、そもそも私の手料理を食べるということがあってよいのだろうか。口に合わなかったらどうしよう。

「あの、すみません。私、佐宗家が忙しい時期は食事をつくったりもしていたので、食べられるものはつくれるかと」

 まごまごしながら言うと、北斗さんはけらけら笑った。

「そんなことは心配していないよ。むしろ、琴子さんの家庭の味が食べられるんだって、わくわくしている」

 北斗さんの言葉に、ちょっとだけ安堵する。頭の中にあるレシピでつくるから不安だったけれど、北斗さんに見守られ、私はなんとか料理を完成させた。

 お皿に盛りつけ、ダイニングに並べる。家でつくっていたものと同じはずなのに、お皿とテーブルが違うだけで高級感を感じるのはなぜだろう。

 それから席に着き、北斗さんと「いただきます」と手を合わせた。
 だが私は料理に手をつけず、北斗さんの様子をじっと見ていた。彼の箸が肉じゃがに伸びる。ひとつつまんで口に入れ、咀嚼するのをつい見守る。

「……うまい」

 北斗さんの小さな声が聞こえて、私はほっと安堵の息をついた。なんだか、テレビ番組でメニューによいジャッジを入れられた、ファミレスの商品開発の人の気分だ。

「本当だよ。甘みが効いている。はちみつを入れていたよね?」
「はい。私の母が、いつもそうつくっていたので」

 そう答えると、北斗さんは「そう」とリラックスした様子で続きを食べ始める。それに少しの嬉しさを感じながら、私も食事を口に運んだ。

 こういう家事炊事なら、彼にお返しができるかもしれない。

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