スパダリ御曹司はスパダリ偽装妻を溺愛で囲い逃がさない
 翌朝、目が覚めるとコーヒーの香りがして、私はダイニングへ向かった。テーブルの上には、ふたり分のトーストに目玉焼き、さらにコンソメスープが並んでいる。

「琴子さん、おはよう」

 驚き目を丸くしていると、キッチンの中からエプロン姿の北斗さんがそう言った。その姿にも、また驚いてしまう。

「これ、北斗さんが?」

 尋ねると、彼はにこりと微笑んだ。

「ああ。昨夜は琴子さんにつくってもらったから、お返し」

 あれは私なりのお返しだったのに、まさかまた返されてしまうなんて。

 再び借りをつくってしまった申し訳なさが募るが、同時に思う。昨日はスーパーにいるのが場違いなくらいの高貴な人だと思ったのに、まさか料理までできてしまうなんて。

 北斗さんは本当に、正真正銘のスパダリだ。
 そんな彼に、私は口を開く。

「では、今日も夕飯は私がつくりますね。朝ご飯を準備してもらったので、それでフェアです」
「そう? 楽しみにしているよ」

 そう言う北斗さんと、ともに朝食をいただく。彼のつくってくれたご飯はどれも、温かくて優しい味がした。

 やがて、北斗さんと一緒に本社に出勤した。

 先日彼に仕事内容を教えてもらった後、私はオリオンレジデンス系列のホテルからやってきた他部門の精鋭を紹介してもらっていた。十二月中に彼らと話し合い、本部がつくった暫定の顧客対応マニュアルを現場に合うよう修正し完成させてほしいと依頼を受けているため、本部での仕事は当分それになる。

 今日も客室係やベルスタッフなどと話し合いを進め、対応マニュアルの修正を進めていく。皆目線が同じだからか、話し合いは有意義に過ぎてゆく。

 仕事を終えると、私は北斗さんより先に帰宅した。夕飯をつくって彼を待っていると、彼は「いい匂いだ」と玄関を入ってくる。

 誰かのためにご飯をつくることは、なんとなく楽しい。そしてそれを、「うまい」と言ってくれる人がいる。私たちの結婚は偽装だが、それはなんだか単純に、嬉しいことのような気がした。

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