スパダリ御曹司はスパダリ偽装妻を溺愛で囲い逃がさない
 翌朝、目覚めると自分のベッドの上にいた。
 いつの間にベッドに戻ったのだろうと思いつつリビングに向かうと、コーヒーの香りが鼻に届く。

「おはよう、琴子さん」

 私は驚き、目をしばたたいた。キッチンに、北斗さんがいる。彼は近隣道路の路面凍結で、帰ってこられなかったはずだ。

「北斗さん、お帰り早かったんですね」
「ああ。今日の仕事もあるし、車で無理なら、電車でと思って始発で帰ってきた。車は路面凍結が解除されたら、持ってきてもらうよ」

 なるほど……。
 納得していると、彼がちらりとリビングに目を向ける。私もそちらに目を向けると、ヴィラの資料が、昨日私がそこに広げたままの状態である。

「琴子さん、ヴィラのことで頑張ってくれているのはとても嬉しい。だけど、あまり根詰めすぎないでくれ」

 彼の言葉に、ぎくりとする。もしかしたら、彼が部屋まで運んでくれたのかもしれない。
 またまた借りをつくってしまったと、私は内心肩を落とした。

「すみません、気をつけます。北斗さんもお疲れでしょうし、朝食の続きは私がやりますね」

 少しでも返したくて、笑顔で言った。なのに、北斗さんは首を横に振る。

「俺が半ば押し付けた仕事なのに、琴子さんがそこまでヴィラに向き合ってくれていることが、本当に嬉しい。だからこれは、そのお返し。気にしないで」

 彼がそう言う間にも、トーストの香ばしい匂いが漂ってくる。
 今日はホテル勤務だ。気持ちを、切り替えないと。

「こちらこそ、私の案をのんでくださってありがとうございます。今日はホテル勤務なので、そちらを頑張ります」

 言いながら、私はせめてもとキッチンに入り、コーヒーメーカーを起動した。すると彼がさっと、カップをふたつ出してくれる。
 私はこんな些細なことでも、彼に敵わないのかもしれない。

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