スパダリ御曹司はスパダリ偽装妻を溺愛で囲い逃がさない
翌日。気持ちを切り替えた私は、北斗さんに勧められて午前中はスパを楽しんだ。
レストランで北斗さんと昼食を取った後は、彼にエスコートされながらアミューズメントカジノへ。遊び方がわからない私に、北斗さんはわかりやすくゲームのルールを教えてくれた。おかげで私も楽しむことができたが、同時にどこでも勝ってしまう彼の強運と、それを鼻にかけずに周囲を巻き込んで楽しむ姿は大人としてかっこよく思えた。
ひと通りの施設で遊び、心地よい疲労感の中、私たちは部屋に戻ってきた。
だが中に入った瞬間、私は違和感を覚えた。部屋の中に、誰かいる気配がするのだ。
「北斗さん」
隣にいる彼をつい見上げると、彼はなんてことない様子で言った。
「プライベートシェフを頼んでおいたんだ。ちょうど夕飯時だし、お腹が空く頃だと思ってね」
なんてスマートなのだろう。彼の段取りのよさは、私よりも断然クオリティ・マネージャーだ。
つい肩を落としそうになるが、北斗さんはそんな私の背に優しく右手を置く。それから左手を前方に差し出し、口を開いた。
「こちらへどうぞ、お姫様」
にこっと優しく微笑まれ、思わず胸がきゅんと鳴る。
いやいや、これは彼の冗談だ。だったら、私の言うべきことは。
「ありがとうございます、王子様」
そう返すと、北斗さんは王子様の微笑のまま、私をダイニングまでエスコートしてくれた。
ダイニングチェアに腰を下ろす。目の前には、すでにテーブルセットが置かれていた。
朝までは私たちしかいなかった空間が一流のレストランになったようで、なんだか落ち着かない。
シェフが部屋のミニキッチンでつくってくれるディナーコースは、創作モダンフレンチだそう。彼の軽やかな料理の手つきを、私はじっと見ていた。
やがて、そばに控えていたギャルソンが最初の料理をテーブルまで運んでくれる。私たちはソムリエが選んでくれた食前のシャンパンで乾杯し、さっそく料理をいただいた。
前菜は伊勢エビとトマトのカルパッチョで、ガラス製のお皿に盛りつけられた柑橘のジュレとエディブルフラワーが、カラフルな絵画のようだ。
温前菜には白身魚のポワレと季節のフルーツ。調理中から部屋の中に香ばしさと甘い香りが広がっていたが、実際に食べたら舌触りも私を楽しませてくれた。
メインは黒毛和牛のロッシーニ風。これも、焼いている音からわくわくしたし、デザートの南国フルーツを使ったグラン・デセールはこの時季らしく、ちょこんと添えられた赤や緑の宝石のようなゼリーがかわいらしかった。
私たちだけのために、シェフやギャルソンが動いてくれている。五感で体験する、豪華で優雅なディナータイムだ。
食事を終えると、ソムリエが食後酒の白ワインをグラスに注いでくれる。その後、スタッフたちは手早く片づけを済ませ、部屋を出ていった。
「北斗さん、ありがとうございます」
ふたりきりになり、私はワイングラスを傾ける彼に小さく頭を下げた。
「なんだか、胸がいっぱいです。〝感動は、期待を上回って初めて成り立つ〟入社時に最初に教わったことを、身をもって体感しました。こんな素敵な体験、初めてです」
すると、北斗さんは「そう」と笑う。その笑顔がやたらと優しく見えて、私の胸はとくりと跳ねる。
どうして、こんなことで……。
私は動揺を隠すように、慌ててワイングラスに口をつけた。冷たくて甘く、フルーティーなアロマの香る食後酒は、口当たりがよく飲みやすい。
だが、思ったよりもアルコール度数は強かったらしい。シロップのようなそれは、喉の奥から胸の辺りをゆっくりと熱くする。
「大丈夫? 少し、夜風に当たろうか」
すぐに私の変化に気づき、北斗さんがそう言って立ち上がる。彼はワイングラスを置いた私の腰を優しく抱きながら、窓際まで誘ってくれた。
レストランで北斗さんと昼食を取った後は、彼にエスコートされながらアミューズメントカジノへ。遊び方がわからない私に、北斗さんはわかりやすくゲームのルールを教えてくれた。おかげで私も楽しむことができたが、同時にどこでも勝ってしまう彼の強運と、それを鼻にかけずに周囲を巻き込んで楽しむ姿は大人としてかっこよく思えた。
ひと通りの施設で遊び、心地よい疲労感の中、私たちは部屋に戻ってきた。
だが中に入った瞬間、私は違和感を覚えた。部屋の中に、誰かいる気配がするのだ。
「北斗さん」
隣にいる彼をつい見上げると、彼はなんてことない様子で言った。
「プライベートシェフを頼んでおいたんだ。ちょうど夕飯時だし、お腹が空く頃だと思ってね」
なんてスマートなのだろう。彼の段取りのよさは、私よりも断然クオリティ・マネージャーだ。
つい肩を落としそうになるが、北斗さんはそんな私の背に優しく右手を置く。それから左手を前方に差し出し、口を開いた。
「こちらへどうぞ、お姫様」
にこっと優しく微笑まれ、思わず胸がきゅんと鳴る。
いやいや、これは彼の冗談だ。だったら、私の言うべきことは。
「ありがとうございます、王子様」
そう返すと、北斗さんは王子様の微笑のまま、私をダイニングまでエスコートしてくれた。
ダイニングチェアに腰を下ろす。目の前には、すでにテーブルセットが置かれていた。
朝までは私たちしかいなかった空間が一流のレストランになったようで、なんだか落ち着かない。
シェフが部屋のミニキッチンでつくってくれるディナーコースは、創作モダンフレンチだそう。彼の軽やかな料理の手つきを、私はじっと見ていた。
やがて、そばに控えていたギャルソンが最初の料理をテーブルまで運んでくれる。私たちはソムリエが選んでくれた食前のシャンパンで乾杯し、さっそく料理をいただいた。
前菜は伊勢エビとトマトのカルパッチョで、ガラス製のお皿に盛りつけられた柑橘のジュレとエディブルフラワーが、カラフルな絵画のようだ。
温前菜には白身魚のポワレと季節のフルーツ。調理中から部屋の中に香ばしさと甘い香りが広がっていたが、実際に食べたら舌触りも私を楽しませてくれた。
メインは黒毛和牛のロッシーニ風。これも、焼いている音からわくわくしたし、デザートの南国フルーツを使ったグラン・デセールはこの時季らしく、ちょこんと添えられた赤や緑の宝石のようなゼリーがかわいらしかった。
私たちだけのために、シェフやギャルソンが動いてくれている。五感で体験する、豪華で優雅なディナータイムだ。
食事を終えると、ソムリエが食後酒の白ワインをグラスに注いでくれる。その後、スタッフたちは手早く片づけを済ませ、部屋を出ていった。
「北斗さん、ありがとうございます」
ふたりきりになり、私はワイングラスを傾ける彼に小さく頭を下げた。
「なんだか、胸がいっぱいです。〝感動は、期待を上回って初めて成り立つ〟入社時に最初に教わったことを、身をもって体感しました。こんな素敵な体験、初めてです」
すると、北斗さんは「そう」と笑う。その笑顔がやたらと優しく見えて、私の胸はとくりと跳ねる。
どうして、こんなことで……。
私は動揺を隠すように、慌ててワイングラスに口をつけた。冷たくて甘く、フルーティーなアロマの香る食後酒は、口当たりがよく飲みやすい。
だが、思ったよりもアルコール度数は強かったらしい。シロップのようなそれは、喉の奥から胸の辺りをゆっくりと熱くする。
「大丈夫? 少し、夜風に当たろうか」
すぐに私の変化に気づき、北斗さんがそう言って立ち上がる。彼はワイングラスを置いた私の腰を優しく抱きながら、窓際まで誘ってくれた。