スパダリ御曹司はスパダリ偽装妻を溺愛で囲い逃がさない
いつもは着替えたらフロントへ向かうところだが、今日はヴィラからやってきたスタッフを出迎え、裏の会議室へと案内した。そこでこのホテルの理念を説明し、館内案内を済ませた後、いくつかのチームに分かれて実践トレーニングを始める。
スタッフたちは優秀で、ヴィラで行ったロールプレイングの甲斐もあり、すぐに丁寧でにこやかな接客を徹底してくれた。私はその様子に安心しつつ、より改善できる点をひとりひとりに指導して回る。
ホテルでのトレーニング期間は二週間。その後、スタッフにはヴィラに戻ってプレオープンに備えてもらい、実際のスピード感やオペレーションのバグなどを洗い出す予定だ。だがこの調子なら、プレオープンも問題なく迎えられるだろう。
そうして研修は順調に進み、三日目が無事に終わった。
明日はスタッフたちの休日のため、トレーニングは一旦中断となる。だいぶホテル業務に慣れてきた皆の様子を思い返し、四日目からの指導内容を脳内で組み立てながら、私は今日の業務を終える。
着替えてロッカーから荷物を取り出すと、スマホに珍しい人物からのメッセージが届いていることに気がついた。
「莉緒ちゃん……」
両親の死後私を育ててくれた佐宗家のひとり娘、佐宗莉緒ちゃんからだった。
つい彼女の名を呟いてしまったのは、莉緒ちゃんからメッセージが届くなんて珍しいからだ。
昔の彼女はどこか頼りなくて、甘え上手。一緒に住んでいた頃は、よく助けてあげていた。
だがそれももう、昔の話だ。私が就職してからは仕事が忙しく、佐宗家に顔を出すタイミングが減った。
たまに佐宗家に行ってもタイミングが悪く、三年前に伯母が亡くなって以降、最近はめっきり会っていない。こうしてメッセージが送られてくることも、ほぼなかった。
珍しいなと思いつつ、私は彼女からのメッセージを開く。
【琴子ちゃん、助けて。お父さんも会社も、大変なの!】
そのメッセージに、胸がぞわぞわと騒ぎだす。私は急いでホテルを出ると、彼女に電話をかけた。
スマホを耳に押し当てながら、駅方面へ向かう。四回のコール音の後、莉緒ちゃんが電話に出てくれた。
「もしもし、莉緒ちゃん? 私、琴子。メッセージ見たよ。なにがあったの?」
心の内は焦っていたが、私はそれを悟られぬようにわざと丁寧に言葉を紡いだ。私が必死な声を出して、莉緒ちゃんの不安を煽ったらいけない。
『よかったあ、琴子ちゃんに繋がった』
彼女は案の定、泣きそうな声をしていた。
「莉緒ちゃん、一回深呼吸して?」
そう言うと、電話口から呼吸音が聞こえた。その声に幾分安堵して、私は続ける。
「落ち着いて状況を教えてくれる? 今からそっちに向かうから」
『……実はお父さんが倒れて、今病院にいるの』
彼女の言葉に、一瞬呼吸が止まりそうになる。だが私は動揺をひた隠し、莉緒ちゃんから病院の場所を聞き出すと、急いでタクシーを捕まえそちらに向かった。
スタッフたちは優秀で、ヴィラで行ったロールプレイングの甲斐もあり、すぐに丁寧でにこやかな接客を徹底してくれた。私はその様子に安心しつつ、より改善できる点をひとりひとりに指導して回る。
ホテルでのトレーニング期間は二週間。その後、スタッフにはヴィラに戻ってプレオープンに備えてもらい、実際のスピード感やオペレーションのバグなどを洗い出す予定だ。だがこの調子なら、プレオープンも問題なく迎えられるだろう。
そうして研修は順調に進み、三日目が無事に終わった。
明日はスタッフたちの休日のため、トレーニングは一旦中断となる。だいぶホテル業務に慣れてきた皆の様子を思い返し、四日目からの指導内容を脳内で組み立てながら、私は今日の業務を終える。
着替えてロッカーから荷物を取り出すと、スマホに珍しい人物からのメッセージが届いていることに気がついた。
「莉緒ちゃん……」
両親の死後私を育ててくれた佐宗家のひとり娘、佐宗莉緒ちゃんからだった。
つい彼女の名を呟いてしまったのは、莉緒ちゃんからメッセージが届くなんて珍しいからだ。
昔の彼女はどこか頼りなくて、甘え上手。一緒に住んでいた頃は、よく助けてあげていた。
だがそれももう、昔の話だ。私が就職してからは仕事が忙しく、佐宗家に顔を出すタイミングが減った。
たまに佐宗家に行ってもタイミングが悪く、三年前に伯母が亡くなって以降、最近はめっきり会っていない。こうしてメッセージが送られてくることも、ほぼなかった。
珍しいなと思いつつ、私は彼女からのメッセージを開く。
【琴子ちゃん、助けて。お父さんも会社も、大変なの!】
そのメッセージに、胸がぞわぞわと騒ぎだす。私は急いでホテルを出ると、彼女に電話をかけた。
スマホを耳に押し当てながら、駅方面へ向かう。四回のコール音の後、莉緒ちゃんが電話に出てくれた。
「もしもし、莉緒ちゃん? 私、琴子。メッセージ見たよ。なにがあったの?」
心の内は焦っていたが、私はそれを悟られぬようにわざと丁寧に言葉を紡いだ。私が必死な声を出して、莉緒ちゃんの不安を煽ったらいけない。
『よかったあ、琴子ちゃんに繋がった』
彼女は案の定、泣きそうな声をしていた。
「莉緒ちゃん、一回深呼吸して?」
そう言うと、電話口から呼吸音が聞こえた。その声に幾分安堵して、私は続ける。
「落ち着いて状況を教えてくれる? 今からそっちに向かうから」
『……実はお父さんが倒れて、今病院にいるの』
彼女の言葉に、一瞬呼吸が止まりそうになる。だが私は動揺をひた隠し、莉緒ちゃんから病院の場所を聞き出すと、急いでタクシーを捕まえそちらに向かった。