スパダリ御曹司はスパダリ偽装妻を溺愛で囲い逃がさない
私たちは、病院近くのファミレスに移動した。
あまり食欲がないという莉緒ちゃんに、私はドリアを注文する。莉緒ちゃんはホワイトソースの味が好きだと覚えていたからだ。
私も同じものを頼むと、すぐに料理が運ばれてくる。莉緒ちゃんは遠慮気味ではあったが、少しずつドリアを口に運んでくれた。
「少しは、落ち着いた?」
莉緒ちゃんが食べ終わったタイミングで、ドリンクバーの温かい紅茶を持ってくる。莉緒ちゃんは俯いたままだったけれど、こくりと頷いてくれた。
「琴子ちゃん、樫江精機のことなんだけれど」
莉緒ちゃんはそのまま、小さな声で言う。私は大丈夫だよと伝えたくて、無造作にテーブルに置かれた彼女の右手に、自分の左手をそっと重ねた。
莉緒ちゃんがちらっと顔を上げる。私が笑顔でこくりと頷くと、莉緒ちゃんはゆっくりと、樫江精機の現状について話してくれた。
経営がかなり傾いていること。業績も赤字続きで芳しくないこと。それから――。
「お父さん、身銭を切って従業員の給料払ってるの」
彼女のその言葉に、私は絶句した。まさか樫江精機が、そんなにひどい経営状況だったなんて。
莉緒ちゃんの声には、力がなかった。私の左手の下で、彼女の小さな手が震えている。
伯父や莉緒ちゃんの苦労は、私が持つべきものだったのかもしれない。そういう思いがあるから、胸にある罪悪感がむくむくと膨れ上がる。
私は小刻みに震える莉緒ちゃんの手を、きゅっと握った。だけど、「大丈夫だよ」なんて軽い言葉はかけられない。
莉緒ちゃんだって、必死に樫江精機を支えようとしてくれている。そんな彼女にかけるには、あまりにも無責任すぎる言葉だ。
では、なんと声をかけたらいい?
必死に頭を巡らせていると、莉緒ちゃんがそっと頭を上げた。その瞳は、涙で潤んでいる。
「琴子ちゃん、お願い。お金を貸してくれない?」
突然のお願い。だが、私はすぐに頷くことができなかった。
彼女の視線を受け止めたまま考えあぐねていると、莉緒ちゃんが再び口を開いた。
「こんなことを頼むのは、申し訳ないって思ってる。だけど、どうにもうまくいかなくて。お父さんの入院費用もかかるし、今は大変なの。琴子ちゃん、わかってくれるよね?」
こちらをじっと見る莉緒ちゃんは、今にも涙があふれそうだ。それでも必死に泣くまいとこらえているからか、莉緒ちゃんの顔中に皺が寄る。
こんな顔を見せられたら、たまらない。
「……わかった。私にできる範囲でなら、貸すことはできる。それでいいかな?」
「琴子ちゃん、ありがとう」
莉緒ちゃんがほっと顔の力を抜く。それで私も幾分安堵して、彼女の手から手を放した。
莉緒ちゃんはそのまま、私の顔を見て少しだけ笑みを浮かべる。
「それで……いくらくらい、出せそう?」
彼女の問いに、私は自分の銀行口座の預金額を思い出しながら答えた。すると莉緒ちゃんは、なぜか首を傾げる。
「琴子ちゃんって、御曹司と結婚したんだよね?」
あまり食欲がないという莉緒ちゃんに、私はドリアを注文する。莉緒ちゃんはホワイトソースの味が好きだと覚えていたからだ。
私も同じものを頼むと、すぐに料理が運ばれてくる。莉緒ちゃんは遠慮気味ではあったが、少しずつドリアを口に運んでくれた。
「少しは、落ち着いた?」
莉緒ちゃんが食べ終わったタイミングで、ドリンクバーの温かい紅茶を持ってくる。莉緒ちゃんは俯いたままだったけれど、こくりと頷いてくれた。
「琴子ちゃん、樫江精機のことなんだけれど」
莉緒ちゃんはそのまま、小さな声で言う。私は大丈夫だよと伝えたくて、無造作にテーブルに置かれた彼女の右手に、自分の左手をそっと重ねた。
莉緒ちゃんがちらっと顔を上げる。私が笑顔でこくりと頷くと、莉緒ちゃんはゆっくりと、樫江精機の現状について話してくれた。
経営がかなり傾いていること。業績も赤字続きで芳しくないこと。それから――。
「お父さん、身銭を切って従業員の給料払ってるの」
彼女のその言葉に、私は絶句した。まさか樫江精機が、そんなにひどい経営状況だったなんて。
莉緒ちゃんの声には、力がなかった。私の左手の下で、彼女の小さな手が震えている。
伯父や莉緒ちゃんの苦労は、私が持つべきものだったのかもしれない。そういう思いがあるから、胸にある罪悪感がむくむくと膨れ上がる。
私は小刻みに震える莉緒ちゃんの手を、きゅっと握った。だけど、「大丈夫だよ」なんて軽い言葉はかけられない。
莉緒ちゃんだって、必死に樫江精機を支えようとしてくれている。そんな彼女にかけるには、あまりにも無責任すぎる言葉だ。
では、なんと声をかけたらいい?
必死に頭を巡らせていると、莉緒ちゃんがそっと頭を上げた。その瞳は、涙で潤んでいる。
「琴子ちゃん、お願い。お金を貸してくれない?」
突然のお願い。だが、私はすぐに頷くことができなかった。
彼女の視線を受け止めたまま考えあぐねていると、莉緒ちゃんが再び口を開いた。
「こんなことを頼むのは、申し訳ないって思ってる。だけど、どうにもうまくいかなくて。お父さんの入院費用もかかるし、今は大変なの。琴子ちゃん、わかってくれるよね?」
こちらをじっと見る莉緒ちゃんは、今にも涙があふれそうだ。それでも必死に泣くまいとこらえているからか、莉緒ちゃんの顔中に皺が寄る。
こんな顔を見せられたら、たまらない。
「……わかった。私にできる範囲でなら、貸すことはできる。それでいいかな?」
「琴子ちゃん、ありがとう」
莉緒ちゃんがほっと顔の力を抜く。それで私も幾分安堵して、彼女の手から手を放した。
莉緒ちゃんはそのまま、私の顔を見て少しだけ笑みを浮かべる。
「それで……いくらくらい、出せそう?」
彼女の問いに、私は自分の銀行口座の預金額を思い出しながら答えた。すると莉緒ちゃんは、なぜか首を傾げる。
「琴子ちゃんって、御曹司と結婚したんだよね?」