スパダリ御曹司はスパダリ偽装妻を溺愛で囲い逃がさない
そう聞いてくる彼女の表情は、先ほどと打って変わってきょとんとしている。それに若干の違和感を覚えながらも、私は彼女の問いに聞き返した。
「御曹司って、北斗さんのこと?」
「そう。獅子内北斗さんって、オリオングループ会長の息子でしょう?」
胸騒ぎを感じながらもこくりと頷くと、莉緒ちゃんは続けた。
「御曹司と結婚したなら、もっと出せるよね? お金たんまりの、豪華な暮らしをしてるんでしょう?」
そんなことはない、と反論しようとしたが、そうとは言い切れなくて私は口を噤んだ。
北斗さんのお兄さんからのプレゼントとはいえ、住んでいる部屋はふたり暮らしには広すぎる3LDK。しかも、都心の一等地に建つマンションの最上階だ。
それに年末には、北斗さんは高級すぎるリゾート施設に連れていってくれた。半分仕事とはいえ、今までの私だったら考えられないようなセレブな体験をさせてくれたのも事実だ。
黙っていると、莉緒ちゃんはさらに続ける。
「私、琴子ちゃんが実家を継がないって家を出ていってから、ずっとプレシャーだったんだよ? 樫江精機を守らなきゃって、必死だったの」
莉緒ちゃんは言いながら、再び目に涙をたたえた。
「樫江精機は琴子ちゃんの両親が遺した会社。なのに、継ぐのは私だって勉強させられて。琴子ちゃんはホテル業界に行って、好きなことをして生きてる。私だって、そういう道を歩みたかった」
涙声で伝えられる莉緒ちゃんの言葉が、胸に重くのしかかる。
私は伯父伯母の意見を尊重したつもりだった。その裏で、こんなに莉緒ちゃんに負担をかけていたなんて、思いもしなかった。
「琴子ちゃんはずっと、両親の仕事をそばで見ていたんだよね? だったら、それがどれだけ大変かわかっていたよね? ……私のお母さんは、そのせいで死んだのよ。お父さんが倒れたのだって、仕事のせい。なのに、琴子ちゃんは御曹司と結婚して、不自由のない暮らしをしてるんでしょう!」
彼女の言葉は語尾に向けて強くなる。それが鋭いナイフのように、私の胸にぐさぐさと突き刺さった。
莉緒ちゃんの言う通りだ。
幼い頃は両親が仕事で忙しいのも、大変なのも知っていた。それなのに、私は伯父の優しさに甘んじて、樫江精機のことを気にしているつもりになっていただけではなかったか。
莉緒ちゃんがこんなになってしまうほど苦しんでいたことに、どうしてもっと早く気づいてあげられなかったのだろう。
「……ごめん」
出した声が震えていて、私は慌てて小さく深呼吸をした。私が泣いていいわけない。苦しいのは、莉緒ちゃんのほうだ。
「御曹司って、北斗さんのこと?」
「そう。獅子内北斗さんって、オリオングループ会長の息子でしょう?」
胸騒ぎを感じながらもこくりと頷くと、莉緒ちゃんは続けた。
「御曹司と結婚したなら、もっと出せるよね? お金たんまりの、豪華な暮らしをしてるんでしょう?」
そんなことはない、と反論しようとしたが、そうとは言い切れなくて私は口を噤んだ。
北斗さんのお兄さんからのプレゼントとはいえ、住んでいる部屋はふたり暮らしには広すぎる3LDK。しかも、都心の一等地に建つマンションの最上階だ。
それに年末には、北斗さんは高級すぎるリゾート施設に連れていってくれた。半分仕事とはいえ、今までの私だったら考えられないようなセレブな体験をさせてくれたのも事実だ。
黙っていると、莉緒ちゃんはさらに続ける。
「私、琴子ちゃんが実家を継がないって家を出ていってから、ずっとプレシャーだったんだよ? 樫江精機を守らなきゃって、必死だったの」
莉緒ちゃんは言いながら、再び目に涙をたたえた。
「樫江精機は琴子ちゃんの両親が遺した会社。なのに、継ぐのは私だって勉強させられて。琴子ちゃんはホテル業界に行って、好きなことをして生きてる。私だって、そういう道を歩みたかった」
涙声で伝えられる莉緒ちゃんの言葉が、胸に重くのしかかる。
私は伯父伯母の意見を尊重したつもりだった。その裏で、こんなに莉緒ちゃんに負担をかけていたなんて、思いもしなかった。
「琴子ちゃんはずっと、両親の仕事をそばで見ていたんだよね? だったら、それがどれだけ大変かわかっていたよね? ……私のお母さんは、そのせいで死んだのよ。お父さんが倒れたのだって、仕事のせい。なのに、琴子ちゃんは御曹司と結婚して、不自由のない暮らしをしてるんでしょう!」
彼女の言葉は語尾に向けて強くなる。それが鋭いナイフのように、私の胸にぐさぐさと突き刺さった。
莉緒ちゃんの言う通りだ。
幼い頃は両親が仕事で忙しいのも、大変なのも知っていた。それなのに、私は伯父の優しさに甘んじて、樫江精機のことを気にしているつもりになっていただけではなかったか。
莉緒ちゃんがこんなになってしまうほど苦しんでいたことに、どうしてもっと早く気づいてあげられなかったのだろう。
「……ごめん」
出した声が震えていて、私は慌てて小さく深呼吸をした。私が泣いていいわけない。苦しいのは、莉緒ちゃんのほうだ。