スパダリ御曹司はスパダリ偽装妻を溺愛で囲い逃がさない
夜の樫江精機はひっそりとしていた。私は莉緒ちゃんとその事務室に入ると、渋る様子の莉緒ちゃんに丁寧に指示し、事務用のパソコンを立ち上げてもらう。
莉緒ちゃんはタクシーの中でも不服そうにしていた。だが、樫江精機の現状を何度も聞くと、少しずつ教えてくれた。
事務作業は莉緒ちゃんが務めていること、帳簿の管理は伯父がしていること。工場は今も閉めておらず、納品に向かって作業をしていること。だが伯父が倒れたことで、今は継続契約している会社への納品以外の受注を一時停止しているらしい。
そんな状況で、さらに借金なんて……。
伯父や莉緒ちゃんの苦悩に胸を痛めつつ、だからこそ私が動かなければという使命感に駆られる。
私は集中して、莉緒ちゃんがつけてくれたパソコンにの会計ソフトに目を通した。だが、そこには昨年までは黒字利益があることが示されている。
どうしてだろう。違和感を胸に、私は考える。
その時、ふと幼い頃の記憶が目の前の状況と重なり、私は奥の金庫の辺りへ向かった。母は生前、この辺りでよく作業をしていた。きっとここに、帳簿や領収書があるはずだ。
私は目的の帳簿を見つけると、それをぱらぱらと捲った。今年に入ってから、数百万単位の使途不明な引き出しが何度も記録されている。
「莉緒ちゃん、これはなんのお金?」
言いながら、莉緒ちゃんを振り返った。彼女はパソコンの画面に向かったまま一度ぴくっと肩を揺らし、こちらを見ながら小さな声で言う。
「そ、それは会社の雑費だよ」
「雑費でこんな大金を? ……領収書がついていないけれど」
私はそれを探そうと、奥にあるファイルに手を伸ばす。するとその時、背後でガタンという大きな音が聞こえた。
振り返ると、莉緒ちゃんが立っていた。その背後で、パソコンの椅子が倒れている。
莉緒ちゃんは俯き、つり上げた肩をぷるぷると震わせていた。だがそのままずんずんとこちらにやってきて、私の腕を掴む。
「それ以上は、触らないで!」
莉緒ちゃんの剣幕は険しく、まるで牙を剝いているようだ。だけど、私は腕を掴む彼女の手が震えていることに気がついて、そこにそっと自分の手を重ねた。
「この先になにがあるのか、なにが隠されているのかわからない。だけど、私がなんとかするって言ったでしょう? 私を信じて」
彼女の目をじっと見てそう言うと、莉緒ちゃんはしばらくの後、諦めたように私の腕から手を放した。
「怒らないでよ。全部、琴子ちゃんのせいなんだから」
私はそんな言葉を聞きながら、奥のファイルを手に取る。すると、一枚の領収書がはらりと落ちてきた。拾い上げると、莉緒ちゃんがすぐ隣でごくりと喉を鳴らす。
だがそれを見て、私も目をひん剥いた。円マークの後ろには、ゼロが六個。その金額に目を疑いつつ、領収書の隅に捺された角印と発行元を見る。
「……ホストクラブ?」
私がそう呟いた途端に、莉緒ちゃんが叫んだ。
「琴子ちゃんのせいだよ! 琴子ちゃんがここからいなくなったから! プレッシャーで押しつぶされそうな私を救ってくれたのは、彼だけなの!」
莉緒ちゃんを振り向くと、彼女は必死の顔で涙を流していた。
莉緒ちゃんはタクシーの中でも不服そうにしていた。だが、樫江精機の現状を何度も聞くと、少しずつ教えてくれた。
事務作業は莉緒ちゃんが務めていること、帳簿の管理は伯父がしていること。工場は今も閉めておらず、納品に向かって作業をしていること。だが伯父が倒れたことで、今は継続契約している会社への納品以外の受注を一時停止しているらしい。
そんな状況で、さらに借金なんて……。
伯父や莉緒ちゃんの苦悩に胸を痛めつつ、だからこそ私が動かなければという使命感に駆られる。
私は集中して、莉緒ちゃんがつけてくれたパソコンにの会計ソフトに目を通した。だが、そこには昨年までは黒字利益があることが示されている。
どうしてだろう。違和感を胸に、私は考える。
その時、ふと幼い頃の記憶が目の前の状況と重なり、私は奥の金庫の辺りへ向かった。母は生前、この辺りでよく作業をしていた。きっとここに、帳簿や領収書があるはずだ。
私は目的の帳簿を見つけると、それをぱらぱらと捲った。今年に入ってから、数百万単位の使途不明な引き出しが何度も記録されている。
「莉緒ちゃん、これはなんのお金?」
言いながら、莉緒ちゃんを振り返った。彼女はパソコンの画面に向かったまま一度ぴくっと肩を揺らし、こちらを見ながら小さな声で言う。
「そ、それは会社の雑費だよ」
「雑費でこんな大金を? ……領収書がついていないけれど」
私はそれを探そうと、奥にあるファイルに手を伸ばす。するとその時、背後でガタンという大きな音が聞こえた。
振り返ると、莉緒ちゃんが立っていた。その背後で、パソコンの椅子が倒れている。
莉緒ちゃんは俯き、つり上げた肩をぷるぷると震わせていた。だがそのままずんずんとこちらにやってきて、私の腕を掴む。
「それ以上は、触らないで!」
莉緒ちゃんの剣幕は険しく、まるで牙を剝いているようだ。だけど、私は腕を掴む彼女の手が震えていることに気がついて、そこにそっと自分の手を重ねた。
「この先になにがあるのか、なにが隠されているのかわからない。だけど、私がなんとかするって言ったでしょう? 私を信じて」
彼女の目をじっと見てそう言うと、莉緒ちゃんはしばらくの後、諦めたように私の腕から手を放した。
「怒らないでよ。全部、琴子ちゃんのせいなんだから」
私はそんな言葉を聞きながら、奥のファイルを手に取る。すると、一枚の領収書がはらりと落ちてきた。拾い上げると、莉緒ちゃんがすぐ隣でごくりと喉を鳴らす。
だがそれを見て、私も目をひん剥いた。円マークの後ろには、ゼロが六個。その金額に目を疑いつつ、領収書の隅に捺された角印と発行元を見る。
「……ホストクラブ?」
私がそう呟いた途端に、莉緒ちゃんが叫んだ。
「琴子ちゃんのせいだよ! 琴子ちゃんがここからいなくなったから! プレッシャーで押しつぶされそうな私を救ってくれたのは、彼だけなの!」
莉緒ちゃんを振り向くと、彼女は必死の顔で涙を流していた。