スパダリ御曹司はスパダリ偽装妻を溺愛で囲い逃がさない
もし北斗さんが今の私の状況を知ったなら、なんて声をかけてくれるのだろう。ふと考え、すぐにふるふると頭を振った。
こんなことを考えるなんて、彼に甘えたいみたいだ。
むしろ今、私が考えなければならないことは逆のこと。どうしたら北斗さんに迷惑をかけずに、今の事態を乗り切るかだ。
気持ちを無理やり切り替えるため、頭の中に莉緒ちゃんを思い浮かべる。すると、嫌な予感が脳裏をよぎった。
『旦那さんに言えばいいじゃない。とにかくお金よ、お金が必要なの!』
莉緒ちゃんはファミレスでそう叫んでいた。
あれは会社のお金じゃなく、今後もホストクラブに通うためのお金だったとしたら。そしてそのお金が、樫江精機から出ないとしたら。
八方塞がりになった莉緒ちゃんが、次にどこへ向かうか。お金を持っていて、憎い身内の近親者……北斗さんに、無心しにいくかもしれない。
「家族なんだから、助けてくれますよね?」
そう言って、泣きそうな顔で北斗さんの同情を誘う莉緒ちゃんの姿が、脳裏に簡単に思い浮かんだ。
そしてそれが発端となって、莉緒ちゃんの横領が表沙汰になったら。妻の親族が横領で捕まるなんて、彼のキャリアと名誉に傷をつけてしまう。ひいてはオリオングループ全体の不利益になるかもしれない。
『俺が上の役職に就くには、結婚は必要条件なんだ。あの令嬢を黙らせるためにも、君と結婚できたらいいなとは思う』
私がこの結婚を申し出た時、北斗さんはそう言った。
互いのメリットのためだった。なのにこれでは、私との結婚が彼の汚点になってしまう。
このままじゃ、ダメだ。そう思い考えを巡らすも、今の私はどうあがいたって、彼にとってデメリットでしかないと思い至る。
だったら、私のすべきことは――。
私は一度深呼吸し、自分の出した結論を小さく口にする。
「……離婚しよう」
このまま北斗さんに迷惑をかけ続けてしまうくらいなら、最初から縁を断ち切ってしまったほうがいい。
『それは、互いに戸籍を動かすということだよ? 君の人生を、奪うことになりかねない』
この偽装結婚を申し出た時、彼はそう言ってくれた。あの時の私は浅はかで、まさか逆のことになるなんて思わなかった。
北斗さんの戸籍に、バツをつけてしまうのは申し訳ない。だけど幸いにも、私たちの関係は偽装の夫婦だ。
恋心を持ってしまったのも、きっと私だけ。だから別れたとしても、彼の心まで傷つけることはないだろう。
仕事も、彼と離れるためには辞めるべきだろう。
どこかで彼と繋がっているままでは、莉緒ちゃんはそれを利用しかねないから。
流れそうになる涙を、ぐっと奥歯を噛み締めこらえた。
泣いている場合じゃない。目の前には、やらなくてはならないことが山済みだ。
私は右手で、左手の指輪を触っていることに気づいた。いつからだろう、落ち着かない時にこうやって指輪を触るのが癖になってしまっていたのは。
私はそのまま、薬指に光る指輪を引き抜いた。彼が忠誠の証だと嵌めてくれた、三つの輪が連なる美しいリング。今の私に、これを嵌めている資格などない。
私はそのままリングをテーブルに置き、決意する。明日、離婚届をもらってこよう。
こんなことを考えるなんて、彼に甘えたいみたいだ。
むしろ今、私が考えなければならないことは逆のこと。どうしたら北斗さんに迷惑をかけずに、今の事態を乗り切るかだ。
気持ちを無理やり切り替えるため、頭の中に莉緒ちゃんを思い浮かべる。すると、嫌な予感が脳裏をよぎった。
『旦那さんに言えばいいじゃない。とにかくお金よ、お金が必要なの!』
莉緒ちゃんはファミレスでそう叫んでいた。
あれは会社のお金じゃなく、今後もホストクラブに通うためのお金だったとしたら。そしてそのお金が、樫江精機から出ないとしたら。
八方塞がりになった莉緒ちゃんが、次にどこへ向かうか。お金を持っていて、憎い身内の近親者……北斗さんに、無心しにいくかもしれない。
「家族なんだから、助けてくれますよね?」
そう言って、泣きそうな顔で北斗さんの同情を誘う莉緒ちゃんの姿が、脳裏に簡単に思い浮かんだ。
そしてそれが発端となって、莉緒ちゃんの横領が表沙汰になったら。妻の親族が横領で捕まるなんて、彼のキャリアと名誉に傷をつけてしまう。ひいてはオリオングループ全体の不利益になるかもしれない。
『俺が上の役職に就くには、結婚は必要条件なんだ。あの令嬢を黙らせるためにも、君と結婚できたらいいなとは思う』
私がこの結婚を申し出た時、北斗さんはそう言った。
互いのメリットのためだった。なのにこれでは、私との結婚が彼の汚点になってしまう。
このままじゃ、ダメだ。そう思い考えを巡らすも、今の私はどうあがいたって、彼にとってデメリットでしかないと思い至る。
だったら、私のすべきことは――。
私は一度深呼吸し、自分の出した結論を小さく口にする。
「……離婚しよう」
このまま北斗さんに迷惑をかけ続けてしまうくらいなら、最初から縁を断ち切ってしまったほうがいい。
『それは、互いに戸籍を動かすということだよ? 君の人生を、奪うことになりかねない』
この偽装結婚を申し出た時、彼はそう言ってくれた。あの時の私は浅はかで、まさか逆のことになるなんて思わなかった。
北斗さんの戸籍に、バツをつけてしまうのは申し訳ない。だけど幸いにも、私たちの関係は偽装の夫婦だ。
恋心を持ってしまったのも、きっと私だけ。だから別れたとしても、彼の心まで傷つけることはないだろう。
仕事も、彼と離れるためには辞めるべきだろう。
どこかで彼と繋がっているままでは、莉緒ちゃんはそれを利用しかねないから。
流れそうになる涙を、ぐっと奥歯を噛み締めこらえた。
泣いている場合じゃない。目の前には、やらなくてはならないことが山済みだ。
私は右手で、左手の指輪を触っていることに気づいた。いつからだろう、落ち着かない時にこうやって指輪を触るのが癖になってしまっていたのは。
私はそのまま、薬指に光る指輪を引き抜いた。彼が忠誠の証だと嵌めてくれた、三つの輪が連なる美しいリング。今の私に、これを嵌めている資格などない。
私はそのままリングをテーブルに置き、決意する。明日、離婚届をもらってこよう。