スパダリ御曹司はスパダリ偽装妻を溺愛で囲い逃がさない
6 君を絶対に逃さない
「とにかく、もう私には関わらないでください。ここにも来ないで」
やっと会えた愛しの妻は、真っ直ぐな瞳で俺を見据えてそう叫んだ。
樫江精機の扉が、無情にも目の前で閉まる。続けて聞こえたがちゃりという音で、鍵をかけられたのだと悟った。
俺は深夜の樫江精機の前でひとり、立ち尽くした。
どうして、離婚なんて。しかもあんなに涙目で、今にも崩れ落ちそうな顔をして。
飛行機の中で何度も繰り返した疑問を、俺はもう一度深く自分に課す――。
事の次第を知ったのは、アメリカにいた十五時間ほど前のこと。
夕方、今回の一番の大仕事であるホテルチェーンとの調印を終えた俺のもとに伝えられた、一本の電話からだった。
『オリオンレジデンスホテル東京の獅子内琴子さんから退職届が提出されています。北斗様はご存じでしょうか?』
念のためだと伝えらたが、寝耳に水だ。嫌な予感が胸をよぎったが、なにかの間違いかもしれないと、俺はもう一度確認してほしい旨を告げて電話を切った。
すると今度は、見慣れぬ番号から着信がある。
『もしもし、獅子内北斗さんですか? 琴子の伯父、佐宗です』
その声は、異様に焦っている。きっと、先ほどの予感は的中したのだろう。
途端にぞわりと胸が騒ぎだす。だが彼に余計な心配をかけるべきでないと、俺は平静を装いゆっくりと声を発した。
『先ほど、琴子がホテルを辞職したと連絡を受けました。なにかあったのですか?』
すると琴子の伯父は、自分が倒れて入院することになり、琴子が責任を感じて樫江精機で働くと伝えてきたと教えてくれた。しかも、俺とも離婚するつもりらしい。
『私も止めたんです。だけど根は真面目で頑固な子だ。一度そうだと言ったら、聞かなくて』
それは俺にも心当たりがある。彼女は臨機応変な態度を取るし、周りをよく見て動ける人だ。周りをフォローするのにも長けているし、相手に不快な思いをさせない行動を取る。
だけど彼女は一度こうだと決めたことに対し、頑ななところがあるのだ。
『北斗さん、どうか琴子を止めてくれませんか? 俺は入院していて動けない。だけど、私はやっと琴子が手に入れた幸せを、壊してほしくない』
伯父の声は、今にも泣きだしそうだった。
「……彼女の手は一生離さないと、俺は決めています。だから、どうか安心してください。彼女が頑固なのは、周りの人を思うがゆえ。その点では俺だって、大概頑固ですから」
俺は彼を安心させるためにも、わざとおどけてそう声をかける。
だが同時に、それは自分を安心させるためでもあった。彼から伝えられた〝離婚〟の二文字に、内心かなり動揺していたのだ。俺だって、琴子を手放したくなどない。
ありがとう、ありがとうと何度も礼を告げる彼女の伯父に、絶対に琴子を繋ぎ止めてみせると誓って電話を切る。
その後すぐ、俺は兄の予定をチェックして電話をかけた。
やっと会えた愛しの妻は、真っ直ぐな瞳で俺を見据えてそう叫んだ。
樫江精機の扉が、無情にも目の前で閉まる。続けて聞こえたがちゃりという音で、鍵をかけられたのだと悟った。
俺は深夜の樫江精機の前でひとり、立ち尽くした。
どうして、離婚なんて。しかもあんなに涙目で、今にも崩れ落ちそうな顔をして。
飛行機の中で何度も繰り返した疑問を、俺はもう一度深く自分に課す――。
事の次第を知ったのは、アメリカにいた十五時間ほど前のこと。
夕方、今回の一番の大仕事であるホテルチェーンとの調印を終えた俺のもとに伝えられた、一本の電話からだった。
『オリオンレジデンスホテル東京の獅子内琴子さんから退職届が提出されています。北斗様はご存じでしょうか?』
念のためだと伝えらたが、寝耳に水だ。嫌な予感が胸をよぎったが、なにかの間違いかもしれないと、俺はもう一度確認してほしい旨を告げて電話を切った。
すると今度は、見慣れぬ番号から着信がある。
『もしもし、獅子内北斗さんですか? 琴子の伯父、佐宗です』
その声は、異様に焦っている。きっと、先ほどの予感は的中したのだろう。
途端にぞわりと胸が騒ぎだす。だが彼に余計な心配をかけるべきでないと、俺は平静を装いゆっくりと声を発した。
『先ほど、琴子がホテルを辞職したと連絡を受けました。なにかあったのですか?』
すると琴子の伯父は、自分が倒れて入院することになり、琴子が責任を感じて樫江精機で働くと伝えてきたと教えてくれた。しかも、俺とも離婚するつもりらしい。
『私も止めたんです。だけど根は真面目で頑固な子だ。一度そうだと言ったら、聞かなくて』
それは俺にも心当たりがある。彼女は臨機応変な態度を取るし、周りをよく見て動ける人だ。周りをフォローするのにも長けているし、相手に不快な思いをさせない行動を取る。
だけど彼女は一度こうだと決めたことに対し、頑ななところがあるのだ。
『北斗さん、どうか琴子を止めてくれませんか? 俺は入院していて動けない。だけど、私はやっと琴子が手に入れた幸せを、壊してほしくない』
伯父の声は、今にも泣きだしそうだった。
「……彼女の手は一生離さないと、俺は決めています。だから、どうか安心してください。彼女が頑固なのは、周りの人を思うがゆえ。その点では俺だって、大概頑固ですから」
俺は彼を安心させるためにも、わざとおどけてそう声をかける。
だが同時に、それは自分を安心させるためでもあった。彼から伝えられた〝離婚〟の二文字に、内心かなり動揺していたのだ。俺だって、琴子を手放したくなどない。
ありがとう、ありがとうと何度も礼を告げる彼女の伯父に、絶対に琴子を繋ぎ止めてみせると誓って電話を切る。
その後すぐ、俺は兄の予定をチェックして電話をかけた。