スパダリ御曹司はスパダリ偽装妻を溺愛で囲い逃がさない
俺は兄さんがあまり得意ではない。だけど、今はそんなことを言っていられない。あの部屋は元々、兄さんの持ち物。兄さんなら、合い鍵も持っている。
「もしもし、兄さん。今すぐチェックしてほしいことがあるんだけれど――」
まさかこんなことに使う日がくるなんて思わなかったが、兄さんは快く俺の頼みを聞いてくれた。おそらく、面白半分だろう。兄さんはサプライズが好きなのだ。
【ビンゴ。部屋にはまだ、琴子さんのと思わしきものもあったけれど】
そんなメッセージとともに送られてきた写真は、自宅のリビングテーブルが映っていた。そこには、彼女の名前の入った離婚届、俺の左手薬指に嵌るのと同じリング、さらに【北斗さんへ】と書かれた手紙がのっている。
さすが琴子、用意周到だ。
俺は後手は苦手だ。だけど今、そんなことを気にしている場合じゃない。俺は兄さんに【ありがとう、まだ父さんには伝えないでくれ】と返信する。
【北斗からのサプライズな知らせ、待っているよ】
それを兄さんなりの激励だと捉え、俺は急いで脳裏でこの後の予定を確認した。
一番の大仕事は終えたところだ。後に予定されているパーティーなどへの出席は、現地の交渉人に任せても問題ないだろう。
俺は自身の予定を白紙に戻し、慌てて日本に帰国した。
太平洋を挟んだこの距離がこんなにももどかしいと思ったのは初めてだ。扉を開けたら日本に帰れる、そんな便利な機械が現実に存在したらと本気で思った。
とにかく、琴子に会いたい。会って、琴子になにがあったのか、真相を確かめたい。
わずかな期待を胸に自宅に戻るも、そこに琴子はおらず、リビングに兄が撮影してくれたままの状態で離婚届と指輪と手紙が置いてあるだけだった。
だとしたら、彼女の居場所は――。
俺はそのまま車を回し、急いで樫江精機に向かった。
――そこで琴子を説得し、連れ戻すつもりだった。なのに、まさか門前払いに遭うなんて。
『私はあなたが嫌いになりました。もうそばにはいたくない。だから離婚届を書いたし、仕事も辞めました。もう関わらないでください』
その言葉に愕然としたのは、それほど強い言葉で俺に拒絶を示すほど、なにかが彼女を追い詰めているとわかったからだ。
普段の彼女は絶対に相手を傷つける言葉を使わない。だからこそ、彼女の言葉の裏には俺を遠ざけようとするなにかがあると確信した。
だが、続けざまに告げられたのは明確な拒絶。今ここで彼女に扉を開けてくれと頼んだところで、彼女は絶対に開けてくれないだろう。
俺は寒空の下、車へと戻りながら空を見上げた。
東の空に、下弦の月が昇り始めたところだ。この時間、この時季ならオリオン座は西の空。それから――。
「カシオペア座……」
樫江精機の名前に似たその星座を、俺は北の空に探した。形を崩しながら沈みかけるそれは、今にも東京の夜に紛れてしまいそうだ。
だが少し視線を上げると、北斗七星が空を駆け上がるように立ち、輝いているのも見えた。
これはきっと、俺に樫江精機を救えということ。
普段は暗示なんて信じないが、なんとなく空がそう教えてくれたような気がして。
俺は車に乗り込み、琴子を連れ戻すべく今後の作戦を考えた。
「もしもし、兄さん。今すぐチェックしてほしいことがあるんだけれど――」
まさかこんなことに使う日がくるなんて思わなかったが、兄さんは快く俺の頼みを聞いてくれた。おそらく、面白半分だろう。兄さんはサプライズが好きなのだ。
【ビンゴ。部屋にはまだ、琴子さんのと思わしきものもあったけれど】
そんなメッセージとともに送られてきた写真は、自宅のリビングテーブルが映っていた。そこには、彼女の名前の入った離婚届、俺の左手薬指に嵌るのと同じリング、さらに【北斗さんへ】と書かれた手紙がのっている。
さすが琴子、用意周到だ。
俺は後手は苦手だ。だけど今、そんなことを気にしている場合じゃない。俺は兄さんに【ありがとう、まだ父さんには伝えないでくれ】と返信する。
【北斗からのサプライズな知らせ、待っているよ】
それを兄さんなりの激励だと捉え、俺は急いで脳裏でこの後の予定を確認した。
一番の大仕事は終えたところだ。後に予定されているパーティーなどへの出席は、現地の交渉人に任せても問題ないだろう。
俺は自身の予定を白紙に戻し、慌てて日本に帰国した。
太平洋を挟んだこの距離がこんなにももどかしいと思ったのは初めてだ。扉を開けたら日本に帰れる、そんな便利な機械が現実に存在したらと本気で思った。
とにかく、琴子に会いたい。会って、琴子になにがあったのか、真相を確かめたい。
わずかな期待を胸に自宅に戻るも、そこに琴子はおらず、リビングに兄が撮影してくれたままの状態で離婚届と指輪と手紙が置いてあるだけだった。
だとしたら、彼女の居場所は――。
俺はそのまま車を回し、急いで樫江精機に向かった。
――そこで琴子を説得し、連れ戻すつもりだった。なのに、まさか門前払いに遭うなんて。
『私はあなたが嫌いになりました。もうそばにはいたくない。だから離婚届を書いたし、仕事も辞めました。もう関わらないでください』
その言葉に愕然としたのは、それほど強い言葉で俺に拒絶を示すほど、なにかが彼女を追い詰めているとわかったからだ。
普段の彼女は絶対に相手を傷つける言葉を使わない。だからこそ、彼女の言葉の裏には俺を遠ざけようとするなにかがあると確信した。
だが、続けざまに告げられたのは明確な拒絶。今ここで彼女に扉を開けてくれと頼んだところで、彼女は絶対に開けてくれないだろう。
俺は寒空の下、車へと戻りながら空を見上げた。
東の空に、下弦の月が昇り始めたところだ。この時間、この時季ならオリオン座は西の空。それから――。
「カシオペア座……」
樫江精機の名前に似たその星座を、俺は北の空に探した。形を崩しながら沈みかけるそれは、今にも東京の夜に紛れてしまいそうだ。
だが少し視線を上げると、北斗七星が空を駆け上がるように立ち、輝いているのも見えた。
これはきっと、俺に樫江精機を救えということ。
普段は暗示なんて信じないが、なんとなく空がそう教えてくれたような気がして。
俺は車に乗り込み、琴子を連れ戻すべく今後の作戦を考えた。