スパダリ御曹司はスパダリ偽装妻を溺愛で囲い逃がさない
前に向き直ると、莉緒ちゃんの背後に井手さんが回っていた。体の大きな井手さんと伯父、北斗さんに囲まれ、莉緒ちゃんはひたすらうろたえる。
だがそんな莉緒ちゃんとは対照的に、伯父は申し訳なさそうに眉をひそめ、言葉を続けた。
「そのことに気づいていながら、私は正しい手続きを取らずにどうにかしようとしてしまった。今回のことをクリアにすべく、私は社長職を辞任することにした」
伯父はそこまで言うと、その場で深く頭を下げた。
「大変申し訳なかった。今後の経営は、オリオングループの優秀な人たちに、一任しようと思う」
そう言う伯父の肩が、小さく震えている。
「伯父さん……」
私がそう呟いた時、ある従業員が背後で声を上げた。
「待ってください、俺たちは社長だからついてきたんだ!」
「社長が辞めるなんて……」
他の従業員からも声が上がる。伯父は顔を上げたが、その眉は申し訳なさそうに下げられていた。
「皆、すまない。でも、莉緒の横領を知っても見逃していたことは、それほど信用にかかわること。オリオングループによる買収も、それを条件にしてもらっているんだ。樫江精機が生き残る道は、もうそれしかない」
伯父の目に、徐々に涙が浮かぶ。
私は複雑な心境で、伯父の顔を見ていた。
両親の死後、伯父はずっと樫江精機を守ってきてくれた。それなのに、まさか辞任に追い込まれるなんて。
だけど、莉緒ちゃんの横領を隠そうとしたのは、会社にとって悪いこと。責任を取った新体制でないと受け入れられないというオリオングループの言い分もわかる。
――だったら、私が。オリオングループに頼らなくても、私がなんとかする。
そう言いたかったけれど、言えなかった。この三日間で、会社の経営がどれだけ大変かを身をもって知った。私に今後、それを立て直す器量はない。
悔しい。つい俯き、拳を握り締める。
「伯父さん、ごめんなさい。私があまりにも、無力だから」
震える声でそう言うと、なにかが私の肩にぽんとのる。
はっと顔を上げると、北斗さんが私に微笑んでいた。それは、とても優しく、私たちを照らしてくれるような微笑だ。
北斗さんはその笑みを浮かべたまま、従業員のほうを向く。そして、さらりと告げた。
「では、佐宗大輔さんには……この樫江精機の、特別顧問職に就いてもらいましょう」
北斗さんの言葉に、はっと目を見開く。それは伯父も同じだったようで、彼も目を見開き北斗さんを見上げていた。
北斗さんはもう一度、私だけに微笑んでくれる。
私と北斗さんは、もう無関係。ひどい言葉も投げたのに、どうしてそんなに私を助けてくれるのだろう。どうしてそんなに優しい笑みを、私に向けてくれるの?
疑問が浮かぶが、それ以上に胸がいっぱいになる。
北斗さんは本物の、スパダリ御曹司様だ。
だがそんな莉緒ちゃんとは対照的に、伯父は申し訳なさそうに眉をひそめ、言葉を続けた。
「そのことに気づいていながら、私は正しい手続きを取らずにどうにかしようとしてしまった。今回のことをクリアにすべく、私は社長職を辞任することにした」
伯父はそこまで言うと、その場で深く頭を下げた。
「大変申し訳なかった。今後の経営は、オリオングループの優秀な人たちに、一任しようと思う」
そう言う伯父の肩が、小さく震えている。
「伯父さん……」
私がそう呟いた時、ある従業員が背後で声を上げた。
「待ってください、俺たちは社長だからついてきたんだ!」
「社長が辞めるなんて……」
他の従業員からも声が上がる。伯父は顔を上げたが、その眉は申し訳なさそうに下げられていた。
「皆、すまない。でも、莉緒の横領を知っても見逃していたことは、それほど信用にかかわること。オリオングループによる買収も、それを条件にしてもらっているんだ。樫江精機が生き残る道は、もうそれしかない」
伯父の目に、徐々に涙が浮かぶ。
私は複雑な心境で、伯父の顔を見ていた。
両親の死後、伯父はずっと樫江精機を守ってきてくれた。それなのに、まさか辞任に追い込まれるなんて。
だけど、莉緒ちゃんの横領を隠そうとしたのは、会社にとって悪いこと。責任を取った新体制でないと受け入れられないというオリオングループの言い分もわかる。
――だったら、私が。オリオングループに頼らなくても、私がなんとかする。
そう言いたかったけれど、言えなかった。この三日間で、会社の経営がどれだけ大変かを身をもって知った。私に今後、それを立て直す器量はない。
悔しい。つい俯き、拳を握り締める。
「伯父さん、ごめんなさい。私があまりにも、無力だから」
震える声でそう言うと、なにかが私の肩にぽんとのる。
はっと顔を上げると、北斗さんが私に微笑んでいた。それは、とても優しく、私たちを照らしてくれるような微笑だ。
北斗さんはその笑みを浮かべたまま、従業員のほうを向く。そして、さらりと告げた。
「では、佐宗大輔さんには……この樫江精機の、特別顧問職に就いてもらいましょう」
北斗さんの言葉に、はっと目を見開く。それは伯父も同じだったようで、彼も目を見開き北斗さんを見上げていた。
北斗さんはもう一度、私だけに微笑んでくれる。
私と北斗さんは、もう無関係。ひどい言葉も投げたのに、どうしてそんなに私を助けてくれるのだろう。どうしてそんなに優しい笑みを、私に向けてくれるの?
疑問が浮かぶが、それ以上に胸がいっぱいになる。
北斗さんは本物の、スパダリ御曹司様だ。