スパダリ御曹司はスパダリ偽装妻を溺愛で囲い逃がさない
「琴子」
悔しさに目に涙をためていると、北斗さんに不意に名を呼ばれた。
そっと顔を上げる。北斗さんは先ほどと変わらず、真剣な眼差しをこちらに向けていた。
「琴子は、まったく悪くない」
落ち着いた口調で、ゆっくりとした速さで述べられた彼の言葉は、ひどく胸に響く。
だけど私は、素直にそれを受け入れられない。いくら悪くないと言われたって、罪悪感は消えない。
再び俯きそうになった時、北斗さんは急に肩の力を抜いた。テーブルに置いていた自身の手元を眺めるその姿は、なんだか落ち込んでいるようだ。
突然、どうしたのだろう。珍しい姿に釘付けになっていると、彼はそっと口を開いた。
「俺自身の話で恐縮だが……俺は逆に、甘えてほしいと思っている人をどれだけ甘やかしても、甘えてもらえなくて困っている」
唐突な話に、ついきょとんとする。すると北斗さんはため息をひとつつき、続けた。
「その人は、大変に頑固でね。いつも俺に気を遣って、俺と対等でいなければならないと思っているみたいで、まったく甘えてくれない」
北斗さんは手元を見たまま、困ったような笑みをこぼした。
彼ほどの人でも、そういうことに悩むらしい。北斗さんに敵う人など、いるわけがないのに。
北斗さんは、ため息交じりにさらに続ける。
「先ほども、俺に遠慮するなと言ったのに反論してきた。だから俺は、彼女を大切にしたいと、彼女のためになりたいと告げたんだが――」
そこまで言うと、北斗さんが不意にこちらを向いた。その顔に浮かんでいたのは、不敵な笑みだ。
胸がどきりと跳ね、同時に目を見開く。
もしかして、北斗さんの『甘えてほしいと思っている人』って、私……?
そう考えたら、急に脳がショートしそうになる。だから私は急いで、思考にブレーキをかけた。そんなこと、あり得ない。
それなのに、北斗さんは突然私に優しく微笑みかける。
「俺の想い、届いた?」
その言葉に鼓動が速まり、耳元で脈打つ。
二月の昼の温かな日差しに照らされた彼のその笑顔は、どれだけ私の胸をときめかせるのだろう。
「だから、琴子はなにも悪くない。もし琴子が悪いとするなら、ひとりで抱え込むところだ。自分に厳しすぎるんだよ、琴子は。だから、もっと俺に甘えて」
そう言う彼の顔は、今までで一番優しく見える。
途端に視界が歪み、私はそっと顔を伏せた。このまま、彼に絆されていいわけがない。
「でも、私たちの関係は――」
言いかけが言葉を、北斗さんが遮る。
「まだ『偽装だ』と言うのか? 俺も琴子も、互いを大切に想っているというのに」
それで、抑え込んでいたはずの涙があふれだした。
――私たちは、互いに想い合っていたんだ。
「北斗さん、私――」
どうにか声を絞り出し、彼に想いを伝えようとする。だけど声が震えて、うまくしゃべれない。
どうにか涙を引っ込めたくて、拭おうとした。だが私の手が目元に触れる前に、彼の手がテーブルの向こうから伸びてきて、私の目元をそっと拭ってくれる。
「琴子。もう、偽装はやめよう」
頬に触れる彼の手の温度が、愛しい。だがそう思ったら、余計に涙が止まらない。
こくりと頷くと、北斗さんは笑みを深くして、私の頬を愛おしそうに撫でてくれた。
悔しさに目に涙をためていると、北斗さんに不意に名を呼ばれた。
そっと顔を上げる。北斗さんは先ほどと変わらず、真剣な眼差しをこちらに向けていた。
「琴子は、まったく悪くない」
落ち着いた口調で、ゆっくりとした速さで述べられた彼の言葉は、ひどく胸に響く。
だけど私は、素直にそれを受け入れられない。いくら悪くないと言われたって、罪悪感は消えない。
再び俯きそうになった時、北斗さんは急に肩の力を抜いた。テーブルに置いていた自身の手元を眺めるその姿は、なんだか落ち込んでいるようだ。
突然、どうしたのだろう。珍しい姿に釘付けになっていると、彼はそっと口を開いた。
「俺自身の話で恐縮だが……俺は逆に、甘えてほしいと思っている人をどれだけ甘やかしても、甘えてもらえなくて困っている」
唐突な話に、ついきょとんとする。すると北斗さんはため息をひとつつき、続けた。
「その人は、大変に頑固でね。いつも俺に気を遣って、俺と対等でいなければならないと思っているみたいで、まったく甘えてくれない」
北斗さんは手元を見たまま、困ったような笑みをこぼした。
彼ほどの人でも、そういうことに悩むらしい。北斗さんに敵う人など、いるわけがないのに。
北斗さんは、ため息交じりにさらに続ける。
「先ほども、俺に遠慮するなと言ったのに反論してきた。だから俺は、彼女を大切にしたいと、彼女のためになりたいと告げたんだが――」
そこまで言うと、北斗さんが不意にこちらを向いた。その顔に浮かんでいたのは、不敵な笑みだ。
胸がどきりと跳ね、同時に目を見開く。
もしかして、北斗さんの『甘えてほしいと思っている人』って、私……?
そう考えたら、急に脳がショートしそうになる。だから私は急いで、思考にブレーキをかけた。そんなこと、あり得ない。
それなのに、北斗さんは突然私に優しく微笑みかける。
「俺の想い、届いた?」
その言葉に鼓動が速まり、耳元で脈打つ。
二月の昼の温かな日差しに照らされた彼のその笑顔は、どれだけ私の胸をときめかせるのだろう。
「だから、琴子はなにも悪くない。もし琴子が悪いとするなら、ひとりで抱え込むところだ。自分に厳しすぎるんだよ、琴子は。だから、もっと俺に甘えて」
そう言う彼の顔は、今までで一番優しく見える。
途端に視界が歪み、私はそっと顔を伏せた。このまま、彼に絆されていいわけがない。
「でも、私たちの関係は――」
言いかけが言葉を、北斗さんが遮る。
「まだ『偽装だ』と言うのか? 俺も琴子も、互いを大切に想っているというのに」
それで、抑え込んでいたはずの涙があふれだした。
――私たちは、互いに想い合っていたんだ。
「北斗さん、私――」
どうにか声を絞り出し、彼に想いを伝えようとする。だけど声が震えて、うまくしゃべれない。
どうにか涙を引っ込めたくて、拭おうとした。だが私の手が目元に触れる前に、彼の手がテーブルの向こうから伸びてきて、私の目元をそっと拭ってくれる。
「琴子。もう、偽装はやめよう」
頬に触れる彼の手の温度が、愛しい。だがそう思ったら、余計に涙が止まらない。
こくりと頷くと、北斗さんは笑みを深くして、私の頬を愛おしそうに撫でてくれた。