婚約破棄された悪役令嬢ですが、最推しの騎士様を愛でるのに忙しいのでノーダメージです!〜推しグッズ工房を立ち上げたら、なぜかご本人から甘やかされています〜

1 婚約破棄の危機? いいえ、最推しの尊さに目覚める時間です!

午後の陽光がステンドグラスを透過して、男子寮の応接室に色鮮やかな影を落としている。
空気中を舞う金色の塵さえも、この完璧な静寂の一部であるかのようだった。

目の前の長椅子には、彫刻のように整った美貌の婚約者――エドウィン・フォーレ・アルカディア第一王子が座している。

金糸を紡いだような髪に、理知的な碧眼。
この国の誰もが「神の最高傑作」と称賛する彼を前にして、私の心は凍てつくような戦慄に支配されていた。

私は、喉の奥からせり上がる叫びを辛うじて飲み込む。

この見覚えのある光景。
会話の流れ。
そして、鏡に映る自分自身の、毒を秘めた薔薇のような美貌。

すべてが、前世で私がプレイし尽くした学園系乙女ゲーム『恋と真理のエトワール』の世界そのものだったのだ。

先ほどエドウィン殿下から婚約破棄に関する話題を、投げかけられたショックで、私は唐突に思い出した。
自分が大学で哲学を専攻しながら、深夜アニメと乙女ゲームに人生を捧げていた「拗らせオタク」だった過去を。

そして私――アルマデリア・エルデンベルクは、ヒロインをいびり倒し、最後には断罪の祭壇に捧げられる、破滅確約済みの典型的な『悪役令嬢』であるという事実を!

「アルマデリア、聞いているのか? 私はお前との婚約を白紙に戻したいと考えている」

エドウィン殿下の冷ややかな声が鼓膜を打つ。

断罪イベントの前倒し!?
いきなりストーリーすっとばすのやめてくれないかな!?

普通なら泣き叫ぶか、青ざめる場面だろう。

「……はい。申し訳ございません、エドウィン殿下。少々考え事をしておりましたわ」

私はすっと背筋を伸ばし、せめて完璧な淑女の笑みを浮かべる。

内心では冷汗だらだらだ。
メインストーリーをきちんと辿っていれば、断罪イベントはエンディング直前。
それが、今、行われているということは……。
スチルフルコンプ後のアナザーストーリーってこと!?

これはどうやって回避すれば。
前世に目覚めるなら、もう少し時間的余裕をくれてもいいのに!!
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