婚約破棄された悪役令嬢ですが、最推しの騎士様を愛でるのに忙しいのでノーダメージです!〜推しグッズ工房を立ち上げたら、なぜかご本人から甘やかされています〜
推し活に費やした日々。
グッズ収集、イベント参加、同人誌即売会。
前世の日本では当たり前だった文化。
好きな人を遠くから応援するという純粋な祈り。
しかしながら、この世界に『推し活』という概念はない。
この世界の貴族社会において、愛とはすなわち独占であり、血と領地の契約であり、支配だ。
だからこそ、本来のアルマデリアは狂気に走った。
ならば、その歪んだ概念を覆せばいい。
遠くから幸せを願うという、崇高な信仰。
それを『推し活』と定義し、私はその司祭オタクとなるのだ。
そうすれば、私も堂々と「殿下の幸せを遠くから願っています~♡」と言える。
恋愛感情ではなく、推しとしての応援だと。
「王子様業だって、大変よね。周りの令嬢たちがみーんな、妃になりたい、恋人になりたい、って執着してくる。それって、本人からしたら重いはず……」
もし「寵愛を受けたい」じゃなくて、「幸せを願う」という形の応援があったら。
王子も楽になるんじゃないだろうか。
そして、その文化が根付けば、私がエリーゼと王子の恋を応援しても、誰も不思議に思わない。
――完璧すぎる。
だが――この考えが、この凝り固まった階級社会でどんな波紋を呼ぶのか。
その時の私は、まだ知らなかった。
ほとばしる情熱のまま、机に向かい、羊皮紙にペンを叩きつけていく。
破滅回避計画、および推し活工房の設立企画書の作成だ。
まずは、彼らの美しさを固定化する『聖遺物』が必要!
たとえば、視覚魔法を定着させた手のひらサイズの肖像画とか。
たとえば、魔法の熱を宿した、推しの体温を疑似体験できるメッセージカードとか。
そんな素敵な物があれば、人々は愛する者を所有しようとして破滅することなく、ただその存在を糧に生きていけるはずだ。
「エイミ、入りなさい」
私は専属侍女を呼び寄せた。
「お嬢様、いかがされましたか?」
「あなたに質問があるの。もし、あなたが密かに慕う騎士の姿を、いつも胸元に忍ばせておけるとしたら、どう思う?」
エイミは顔を赤らめ、驚きに目を見開いた。
「それは……夢のようなお話ですわ。もしそんなことが叶うなら、私は一生、そのお姿のために忠誠を誓うでしょう」
確信した。
需要はある。
――この世界にも、オタクの素質を持つ者は存在するのだと。


