あなたは悪魔で運命の人

新しい世界


鳥が鳴いている気配に目を覚ました。

「…私…そうだ昨日…そのまま寝てしまったんだ。」

私はそっとベッドの隣を見た。
いつものように龍崎部長の姿はない。

しかし、その時だったドアが開く音がした。


“カチャ…”


「…えっ…龍崎部長はいるの?」


驚きながらドアを見つめていると、シャワーを浴びた龍崎部長が、髪を濡らしたまま入って来た。


「恵美、なぜ驚いた顔をしているんだ?俺がシャワー浴びるのが珍しいのか?」

「い…いえ…違うのです。目が覚めるといつも居らっしゃらなかったので驚いただけです。」

龍崎部長はクスッと笑った。

「そうだな、確かにいつも居なくなっていたからな。」

その時、頬にふわっと優しい感触がした。
龍崎部長の口づけだった。

急に恥ずかしくなり、顔が熱くなる。

「恵美、何も変わっていないように思うが、新しい世界が今日から始まるんだ。君にとって苦しい現実となるだろう。」

「…新しい…世界ですか?」

「そう。これから会社に行くと君のことは誰も知らない。転勤で来たことにしよう。以前の俺と同じような感じだな。」

「…そ…そうなん…ですね。」

よく意味は分からないが、なぜか不安な気持ちになった。
分ってはいたが想像以上に私の世界が変わってしまうようだ。
その気持ちに気づいたのか、龍崎部長は私の頬に優しく触れた。

「恵美、何も心配はいらない。俺のフィアンセという設定にしよう。俺に合わせていれば大丈夫だ。…まだ心配か?」

「いえ…龍崎部長が居てくれれば、大丈夫です。」

「龍崎部長は会社の中だけだ。これからは名前で呼んでくれ。」

「…圭吾さん。…圭吾。」

「そうだ、良くできました。フィアンセなら名前で呼び合うのが良いだろう。」



これが、私の選んだ答えだ。
苦しい事が起こるかも知れないが自分で選んだことだ。


私は急いで身支度を整え、会社に向かう準備をした。
うちの会社は部長以上の管理職は自動車での通勤が許されていたため、今日は龍崎さんの車で一緒に会社へ行くことになった。

助手席に座り隣を見ると、スーツ姿の圭吾。
何故か恥ずかしく顔が熱くなる。


ただ…心にズキッと何かが刺さった。

考えてはいけないことが脳裏をよぎる。


(…運転席は…もう健斗じゃないんだ…)



「…恵美…大丈夫か?」

「…大丈夫です。心配しないでください。」

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