あなたは悪魔で運命の人
その日の夜。
「…恵美、ただいま。」
「…おかえりなさい。」
圭吾より早く帰っていた私はソファーに座り顔を合わせないようにした。
なぜか今日の朝の一件から気分がすぐれないのだった。
「…恵美、どうした?」
「…何でもないです。」
圭吾はすこし拗ねている態度の私の前へと回り込むと、私の顔を覗き込んだ。
圭吾の顔を近くで見たとき、何故か涙が溢れてぽろぽろと流れ落ちてしまった。
思いもしない私の態度に圭吾は少し慌てているようだ。
「め…めぐ…恵美、どうしたんだ。」
「…圭吾は、美人でグラマーな人が好きなんでしょ。」
「…えっ、何を言ってるのかわからないのだが。」
「私はグラマーじゃないし、あんなに色気ないですしね。」
「…っはっ?」
訳が分からない圭吾に八つ当たりのように言葉を続けた。
「どうせ私はどんくさい女だし。」
朝に言われた柳原さんの言葉を思い出し、さらに涙が溢れた。
「お…おい恵美。まったく意味が解らないし、どうしたんだ。」
圭吾は親指で涙を拭って、じっと私を見つめた。
「何があったんだ。グラマーとか、色気とか、どんくさいとか…さっぱりわからない。」
「圭吾はカッコいいし…優しいからモテるのはしょうがないけど…あの人だけは嫌なの!」
「…っは?誰のことを言ってる?」
圭吾は驚いた表情で目を大きくした。
「秘書課の柳原麗美さん!あの人だけは嫌なの。」
「…恵美、もしかして、妬いているのか?」
「違います。今日、圭吾が営業部に来た時、柳沢さんが胸を圭吾に押し付けていて、圭吾は嬉しそうに見えたし。」
その時、圭吾にいきなり口を塞がれた。
突然の口づけに抵抗しても、頭を押さえられて動けない。
唇が離されたとき、深い口づけに私は息が上がるほどだった。
「恵美。俺が愛しているのは恵美だけだ。」
「圭吾は…女の人に誘われると、すぐエッチするし…」
「やきもち妬く、可愛い婚約者を絶対に悲しませないと誓うよ。」
圭吾は私の頭を優しく撫でてくれた。
「私、少し柳原さんが恐いです。」
「そういえば彼女はやたら俺に引っ付いてくるな。」
圭吾はなにか考えるような表情をした。