窓ガラスの向こうにいた恋
翌日の放課後。温室で昨日の片付けをしていた。

「ごめん!」

凪が慌てて時計を見た。

「今日、バイトだった!先に行かなきゃ!」
「こっちはもう大丈夫だから、急いで。」
「ほんとにごめんね!また来週!」

慌ただしく走っていく凪に手を振る。温室には、私と澪先輩、それから数人の先輩だけが残った。

「翡翠ちゃん。」
「はい。」
「今日ね、お世話になった先生方へ渡す花束を作ろうと思うんだけど、一緒にやってみない?」
「私がですか?」
「うん。翡翠ちゃんなら、きっと大丈夫。」

その言葉が嬉しくて、自然と笑顔になった。
二人で向かい合い、花を一本一本選んでいく。

「このガーベラ、かわいい。」
「じゃあ主役にしようか。」
「スプレーバラは?」
「いいね。優しい雰囲気になる。」

花を選ぶ時間は、驚くほど穏やかだった。近くで聞こえる澪先輩の声。花を持つ細くきれいな指先。ふと目が合うたび、胸が少しだけ落ち着かなくなる。

「できた。」

二人で顔を見合わせて笑う。

「すごく素敵。」

そう言って笑う澪先輩の笑顔が、今日見たどんな花よりもきれいだと思った。
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