窓ガラスの向こうにいた恋
マルシェ当日。家族連れや年配の夫婦、小さな子どもたちがブースへ立ち寄る。

「この花束、お母さんに。」

そう言って選ぶ男の子を見て、みんな自然と笑顔になった。ブースは大盛況だった。


片付けをしながら、澪先輩がスマートフォンを取り出した。
「あ、ごめん。」

通知を見て笑う。

「今日も迎えに来てくれるんだ。」
「彼氏さんですか?」

三年生の先輩が何気なく尋ねる。

「うん。」

澪先輩は少し照れたように笑った。

「最近忙しくてあんまり会えてなかったから。」

その言葉を聞いた瞬間。胸のどこかが、小さくきしんだ。でも、その痛みの正体は分からなかった。


< 20 / 21 >

この作品をシェア

pagetop