見積もりには書けないもの

第十八話 『ハートの羊』

「悲しくて……スタンプしか押せなかったの」

最初の一文が飛び込んできた。

その後の丁寧な挨拶の先に、真実が飛び込んできた。

「主人に相談したら、壁なんて要らないって……」

主人……

壁なんて要らない……

羊の涙の訳。

勘違いのアンサーが、一番ショックでダサかった。

その数秒後に、ようやく、

「壁なんて要らない」

という言葉が頭の中に入ってきた。

だから言ったじゃん。

ハートに何の意味もないのよ。

何十年生きてきたのよ。

半笑いの俺は、ようやく少し冷静になった。

ピコーン。

またLINEが鳴る。

森下さんだった。

「でもね、私は原澤さんの気持ちや思いが伝わってたし、壁を作って欲しい。だから久しぶりに電話だけど、大喧嘩しちゃった」

「主人より原澤さんの方が、よっぽど理解者だよ」

「勝手にしろってゆーから、勝手にする」

そして最後に、

口元にハートをつけた羊のスタンプ。

もう……

ハートは使わないで欲しい……

勘違いのジェットコースターに乗りすぎて、俺はもう、俺の理解者にはなれない気がした。

森下さんの理解者か……

俺はとりあえず、謙遜と感謝を伝えた。

そして、いつものコンビニへ向かった。

今日はハイボールでも飲もうかな。

遅番のベトナム人のウェイ君と軽く会話をし、いつもながらの気持ちいい接客に感謝しつつ、帰路についた。
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