見積もりには書けないもの

第十九話 『甘酸っぱい隠し味』

カラン。

ハイボールの入ったグラスから、氷の音が聞こえた。

昼間に聞いたアイスコーヒーのリズムとはまた違っていたが、これはこれで心地よいリズムに、今日は聞こえた。

今日は濃かったな。

グラスを持ちながら、今日一日をゆっくりと回想していた。

甘酸っぱい一日だったな……。

別に、家族に不満があるわけじゃない。
子どもだって、何より大切だ。

毎日に刺激がないとも思わない。

ただ、毎日があっという間に過ぎていく。

仕事のこと。
家庭のこと。

その日その日を一生懸命に、前向きにやってきた。

気がつけば夜になっていて、自分の時間といえば、熱闘甲子園を観ながら酒を飲む、この時間くらいだ。

それでも、不満があるわけじゃない。

それなりに楽しく生きてきた。

でも……

でも、なんだろう。

これが足りてなかったんだ。

そんなことを、今日一日で確信してしまった気がする。

甘酸っぱさが欲しかったのか……。

酸味は、人生のアクセントなのか……。

この甘酸っぱさは、仕事や家族からは出せない味なのか。

真面目に生きるということに、酸味が不必要ならば。

それを求める俺は、悪なのか……。

いや。

きっと、みんな甘酸っぱい味を、たまには欲するんだと思う。

ただ、そこには一線を引く。

壁を作る。

そして、その壁にできた僅かな隙間から、ほんの少しだけ甘酸っぱい味を堪能する。

いや……

人生という料理の、ちょっとしたアクセントにする。

みんな形は違っても、甘酸っぱさを限られた範囲の中で、隠し味にしているんだろう。

今日は酔ったわ……。

甘酸っぱさに振り回されながら、

俺は眠りについた。
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