見積もりには書けないもの
第二十七話 『デートみたい』
午前十一時四十五分頃。
「大山さんっ、見切り良ければお昼にしましょうか?」
大工さんに限らず、乗っている時の職人たちは、こっちから声を掛けなければ止まらない。
「自分でここまでやったらお昼」と目標を決めて、そこを終えるまで進める人もいる。
ただ、俺の立場は少し違う。
埃が舞うため、ダイニングやキッチンの方まで養生をしてある。
もちろん、冷蔵庫など必要なものは使えるように配慮している。
森下さんにも、
「もしかしたら料理とかしづらいかもしれませんので、何でも遠慮なく声掛けてください」
と伝えてある。
俺は在宅工事の場合、施主様のお昼やトイレ、普段の生活スタイル。
そういうところへの配慮も大切にしている。
まぁ……当たり前だよな。
大山さんはいつもお弁当だ。
道具を片付け、お昼に入ってもらった。
大山さんの車は敷地内に停めさせてもらい、俺の車は家の前の公園を挟んだ反対側にある、公園の無料駐車場に停めてある。
部屋を片付け、二階にいる森下さんに下から声を掛けた。
すると森下さんが、
「ご苦労様〜」
と言いながら階段を降りてきた。
「お昼、どうするの?」
俺が聞こうとしていたセリフを、先に言われた。
いや……
作れないだろうから、ほか弁でも買って来ようか?
そう言おうと思っていた。
「えー、ありがとう!」
少し間を置いて、
「なら、一緒に行きたいな」
そう言って微笑んだ。
子猫にしか見えない森下さんを、思わず抱きしめたくなった。
……いや。
ほんとに、そんなことは出来ないのは分かっている。
ただ、路頭に迷っている子猫が道路をフラフラしていたら、無意識に抱き上げるだろう。
不純じゃないんだ。
この感情は。
純粋に、ただ純粋に、
守ってあげたい。
その気持ちの延長線なんだ。
そう言い聞かせてみた。
けれど……
好きだと自分で認めてしまった以上、そんな言い訳は何の意味も持たない。
ただ、これは行動に移すな。
言葉には出すな。
仕事に集中しろ。
俺は何度も自分に言い聞かせた。
ただ、森下さんのお昼もある。
これはちゃんと説明のつく行動だ。
そう自分に言い聞かせ、車へと向かった。
幸い、大山さんは食事を終えて昼寝をしていた。
見つからずに済んだ。
駐車場に着き、助手席のドアを開ける。
木陰の下にあったからか、灼熱の車内というほどではない。
それでも暑い。
俺はすぐにエンジンをかけ、車内を冷やした。
すると森下さんが、助手席に座りながら言った。
「初めて原澤さんの車、乗ったね」
そして少し照れたように笑いながら、
「なんか……デートみたい」
そう言って微笑んだ。
俺は、その森下さんを見つめてしまっていた。
「大山さんっ、見切り良ければお昼にしましょうか?」
大工さんに限らず、乗っている時の職人たちは、こっちから声を掛けなければ止まらない。
「自分でここまでやったらお昼」と目標を決めて、そこを終えるまで進める人もいる。
ただ、俺の立場は少し違う。
埃が舞うため、ダイニングやキッチンの方まで養生をしてある。
もちろん、冷蔵庫など必要なものは使えるように配慮している。
森下さんにも、
「もしかしたら料理とかしづらいかもしれませんので、何でも遠慮なく声掛けてください」
と伝えてある。
俺は在宅工事の場合、施主様のお昼やトイレ、普段の生活スタイル。
そういうところへの配慮も大切にしている。
まぁ……当たり前だよな。
大山さんはいつもお弁当だ。
道具を片付け、お昼に入ってもらった。
大山さんの車は敷地内に停めさせてもらい、俺の車は家の前の公園を挟んだ反対側にある、公園の無料駐車場に停めてある。
部屋を片付け、二階にいる森下さんに下から声を掛けた。
すると森下さんが、
「ご苦労様〜」
と言いながら階段を降りてきた。
「お昼、どうするの?」
俺が聞こうとしていたセリフを、先に言われた。
いや……
作れないだろうから、ほか弁でも買って来ようか?
そう言おうと思っていた。
「えー、ありがとう!」
少し間を置いて、
「なら、一緒に行きたいな」
そう言って微笑んだ。
子猫にしか見えない森下さんを、思わず抱きしめたくなった。
……いや。
ほんとに、そんなことは出来ないのは分かっている。
ただ、路頭に迷っている子猫が道路をフラフラしていたら、無意識に抱き上げるだろう。
不純じゃないんだ。
この感情は。
純粋に、ただ純粋に、
守ってあげたい。
その気持ちの延長線なんだ。
そう言い聞かせてみた。
けれど……
好きだと自分で認めてしまった以上、そんな言い訳は何の意味も持たない。
ただ、これは行動に移すな。
言葉には出すな。
仕事に集中しろ。
俺は何度も自分に言い聞かせた。
ただ、森下さんのお昼もある。
これはちゃんと説明のつく行動だ。
そう自分に言い聞かせ、車へと向かった。
幸い、大山さんは食事を終えて昼寝をしていた。
見つからずに済んだ。
駐車場に着き、助手席のドアを開ける。
木陰の下にあったからか、灼熱の車内というほどではない。
それでも暑い。
俺はすぐにエンジンをかけ、車内を冷やした。
すると森下さんが、助手席に座りながら言った。
「初めて原澤さんの車、乗ったね」
そして少し照れたように笑いながら、
「なんか……デートみたい」
そう言って微笑んだ。
俺は、その森下さんを見つめてしまっていた。