見積もりには書けないもの
第二十八話 『アクセルとブレーキ』
ぐっと堪えて前を向いた。
シフトをDに切り替え、走り出した。
「走りながらで悪いけど、ほか弁でも良い?」
そう聞きながらアクセルを踏み込んだ。
心にはブレーキをかけながら……
心配だから、心のサイドブレーキもしっかりと。
本当は、どこかお店でも入ってゆっくりしたかった。
でも、そこは配慮も必要だ。
買い出し。
言い訳の出来る範囲での行動を心掛けた。
「うん。なんでも良いよ」
少し間を置いて、
「なんだって嬉しい」
森下さんが俺を真っ直ぐ見つめて話しているのが分かった。
でも俺は、安全運転に集中しているフリをした。
「あのね……」
彼女は続けた。
「ほら、あの日。旦那がいた日ね」
「原澤さん、わたしの思いを真っ直ぐ旦那にぶつけてくれたじゃん」
「熱くね……」
クスッと笑った。
「あの時さ、覚えてる?」
森下さんの今を見つめてあげてください。
森下さんの明日の笑顔を想像してあげてください。
そう言ってくれたの。
正直、覚えていた。
もちろん。
本心で向き合っていたから。
でも、とっさにとぼけてしまっていた。
「そんな熱いこと言ってた……?」
照れ笑いで誤魔化した。
「うん」
少し間を空けて、彼女は続けた。
「わたしね、ほんとに嬉しかったの」
「目の前で、わたしを守ってくれてるって」
「キュンとしちゃった」
「ありがとうね」
「ほんとに……ありがとう」
そして、少し声を落として続けた。
「だからね、もう呆れられたかなとか……」
「何なんだ、あいつって思われたかなって考えたら、わたしから連絡出来なかったの……」
「ごめんなさい」
そう言うと、森下さんはそっと視線を前に戻した。
「そんなことない」
本心をぶつけただけだ。
俺の方が……
俺の方がずっと不安だったんだ。
そう心の声に蓋をして、俺は答えた。
サイドブレーキを、しっかり引きながら。
「いや、こちらこそありがとうだよ」
と、訳の分からない「こちらこそ」を付け加える。
それが精一杯だった。
少し寂しそうにする森下さんを、横目に感じながら、ほか弁に着いた。
サイドブレーキなんか……
ブレーキなんか必要か……?
彼女は俺に、アクセルを踏んできてくれたんだぞ。
悶々としながら、二人でほか弁へと向かった。
シフトをDに切り替え、走り出した。
「走りながらで悪いけど、ほか弁でも良い?」
そう聞きながらアクセルを踏み込んだ。
心にはブレーキをかけながら……
心配だから、心のサイドブレーキもしっかりと。
本当は、どこかお店でも入ってゆっくりしたかった。
でも、そこは配慮も必要だ。
買い出し。
言い訳の出来る範囲での行動を心掛けた。
「うん。なんでも良いよ」
少し間を置いて、
「なんだって嬉しい」
森下さんが俺を真っ直ぐ見つめて話しているのが分かった。
でも俺は、安全運転に集中しているフリをした。
「あのね……」
彼女は続けた。
「ほら、あの日。旦那がいた日ね」
「原澤さん、わたしの思いを真っ直ぐ旦那にぶつけてくれたじゃん」
「熱くね……」
クスッと笑った。
「あの時さ、覚えてる?」
森下さんの今を見つめてあげてください。
森下さんの明日の笑顔を想像してあげてください。
そう言ってくれたの。
正直、覚えていた。
もちろん。
本心で向き合っていたから。
でも、とっさにとぼけてしまっていた。
「そんな熱いこと言ってた……?」
照れ笑いで誤魔化した。
「うん」
少し間を空けて、彼女は続けた。
「わたしね、ほんとに嬉しかったの」
「目の前で、わたしを守ってくれてるって」
「キュンとしちゃった」
「ありがとうね」
「ほんとに……ありがとう」
そして、少し声を落として続けた。
「だからね、もう呆れられたかなとか……」
「何なんだ、あいつって思われたかなって考えたら、わたしから連絡出来なかったの……」
「ごめんなさい」
そう言うと、森下さんはそっと視線を前に戻した。
「そんなことない」
本心をぶつけただけだ。
俺の方が……
俺の方がずっと不安だったんだ。
そう心の声に蓋をして、俺は答えた。
サイドブレーキを、しっかり引きながら。
「いや、こちらこそありがとうだよ」
と、訳の分からない「こちらこそ」を付け加える。
それが精一杯だった。
少し寂しそうにする森下さんを、横目に感じながら、ほか弁に着いた。
サイドブレーキなんか……
ブレーキなんか必要か……?
彼女は俺に、アクセルを踏んできてくれたんだぞ。
悶々としながら、二人でほか弁へと向かった。