見積もりには書けないもの

第三十二話 『幕引きの音』

工程通りに工事は進み、四日で仕上げが完成した。

想像以上に色合い、雰囲気ともにカッコ良く、間仕切りの存在する意味も伝わってくる。

仕上げが終わると、細かな補修と掃除はいつも俺の仕事だ。

四日目のクロスの仕上げが遅くまでかかってしまったのもあり、五日目の予備日は俺一人で来た。

とても満足してくれている森下さんを見て、俺は安心した。

今日の作業内容を告げると、森下さんは言った。

「それなら、ダイニングに座ってても良い?」

「良いよ」

即答していた。

床の隙間。

幅木とクロスの隙間の補修。

当たり前だが、この些細な補修作業が全体のまとまりを左右する。

◯◯屋さんという職種じゃないが、この仕上げの確認は監督の腕の見せ所だ。

作業をしながらも森下さんと会話をする。

森下さんも、

「なんか、かっこいいね」

と褒めながら、色んな話をしてくれた。

終わっちゃった……

掃除をしながら、頭をよぎる。

完成したよ……

壁。

その思いは、確実に森下さんにも伝わっていた。

完了確認。

二人で仕上がった箇所を見て回る。

申し分ない。

最高の仕事をした。

「ありがとうございました」

深々と頭を下げる森下さんを、ただ見つめていた。

これで終わりにするべきか……

いや。

終わりにしなきゃダメだろ。

休憩時に出してくれたアイスコーヒーの氷が鳴る。

カラン。

カラン。

「やめろよ……」

上手い幕引きみたいなリズム。

カラン。

アイスコーヒーは、

すべて分かっていた。
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