天使とケサランパサランの靴屋
 コーリャが不思議そうに近づくと、そばかすの天使は、嬉しそうに後退りしながら彼の道をあけました。

 そのまま入口のドアに背を預けると、彼がオルゴールを手にする光景を、愛おしそうに眺めます。

 コーリャはオルゴールをそっと抱きかかえ、自身の作業台へと持ち帰りました。

 その拍子に、錆びついたゼンマイが彼の手の中で、「ジジッ、ジジッ……」と切なげな音を立てます。

(おお、お前も寂しくなって、ワシの近くにやってきたのかい?)

 そんな優しいことを考えながら、作業台のすぐ近くに「コトッ」と置くと、コーリャは少し照れくさそうに目を細めて微笑みました。

 コーリャは、愛する妻との懐かしい歌を静かに口ずさみながら、再び靴作りへと没頭していきます。

「ケサラン、パサラン」――トントントンッ。
「ケサラン、パサラン」――トントントンッ。

 久しぶりに耳にする彼の歌声と働く姿に、そばかすの天使は嬉しくてたまらなくなり、胸の前で両手をそっと重ね合わせました。

 コーリャの持つ温かい心が、冷えていた彼女の心をも優しく溶かしていくようです。

(私も、あなたの言う『ケサランパサラン』になれたなら……)

 コーリャを愛おしそうに見つめながら、天使はありったけの勇気を振り絞るようにして、彼の言葉を真似て口元を動かしました。

(――ケサラン、パサラン)
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