天使とケサランパサランの靴屋
 ナターシャは父を見つめ、そして、その奥の壁に寄り添うように立つ翼を持つ少女をじっと見つめています。

 そばかすの天使も、久しぶりにナターシャに見つめてもらい、喜びという名の心が溢れ出していました。 


(この家族と過ごすようになり、私は貴方がエレーナのお腹の中にいる頃から知っている)
 家族の中で、私の存在が見えるのは、幼いナターシャ。貴方だけだけだった。
 あの頃の貴方は私に視線を向け、話しかけるように手を伸ばすこともあったわ。
 そんなの仕草を見て、彼ら夫婦は、面白がるように微笑んでいたのよ。


 幼いナターシャの姿を見つめる、そばかすの天使の前を、コーリャは衰えの消え去った足で妻に駆け寄ると、その体を強く抱きしめました。

「僕は嬉しいんだ。君ともう一度、こうして会えたことが……!」

 エレーナは突然のことに驚いた表情を見せましたが、やがてそれを穏やかな笑みに変え、彼の背中にそっと自身の両手をまわしました。

「コーリャ、私もよ。いつもあなたのそばに居たいわ。結婚するときに交わしてくれた約束――『家族を一生守る』。私も、まったく同じ気持ちよ」

 抱き合う二人に向けて、幼いナターシャも愛らしく両手を伸ばします。

 エレーナは照れたように笑うと、気持ちを切り替えるように言葉を続けました。

「さあ、食事の準備をしましょうか」

「ああ、そうだね。朝のスープは温めておいたから」

 すっかり過去に戻ったコーリャの口からは、自然とその言葉が溢れ出ていました。
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