天使とケサランパサランの靴屋
「すまない。落ちた拍子に翼が割れてしまったのに、不器用に直してやることしかできなくて」

「何を言っているの? 形あるものはいつか壊れるわ! それに私たちだって、いずれ歳をとるもの。同じよ。この天使様は私たちの家族……ケサランパサランでしょう?」

「ああ、そうだね。彼女は僕たちにとってのケサランパサランだ。彼女の名前は、ケサランパサランだよ」

 ナターシャは、隣に立つそばかすの天使に「あなた?」と小さな指を向けました。
 そばかすの天使は、誇らしげに、そして満面の笑顔で頷くのでした。

 コーリャの瞳にわずかな正気が戻ったのを感じ取り、それまで優しく見つめていたエレーナは、柔らかな笑顔で気持ちを切り替えました。

「冷めないうちに食事をしましょう。さあナターシャ、いただきましょう」

 どこか遠くを見つめているナターシャの様子を愛おしそうに眺め、エレーナはコーリャへ呟きます。

「この子ったら、いつも何を見ているのかしらね?」

 コーリャは一口スープを飲み込むと、スプーンを手にしたまま、ナターシャを優しく見つめ返しました。

「この子には、見えているんじゃないかな」

 エレーナは、夫の言わんとすることがすぐに分かりました。

「ケサランパサランが……?」

「ほら、ナターシャがもう少し小さかった頃、どこかの野良犬がこの子に近づいてきたことがあっただろう? 僕たちが気づいて駆けつけるより先に、犬が急に何かに怯えて逃げ出したじゃないか」

「それが、あの天使……ケサランパサランだっていうの?」

「ああ。僕たちが希望を持ち続ける限り、ずっとそばにいてくれる。そんなケサランパサランの姿が、ナターシャには見えているのかもしれないね」

 エレーナは少しだけ視線を落とし、愛おしそうに呟きました。

「じゃあ……このまま、ここにいる? このまま幸せだけを感じて、生きてみる?」
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