天使とケサランパサランの靴屋
過去の自分は必死の形相で工房へ駆け込むと、呆然と佇むコーリャの体をそのまま突き抜けていきます。
暗い沈黙の中、コーリャはハッと我に返り、振り返りました。
温かかった灯火は影も形も消え去り、どんよりとした灰色の情景が部屋を包み込んでいます。
視線の先には、冷たいベッドの上に静かに横たわる妻エレーナと、その傍らで声をあげて泣きじゃくる、幼いナターシャの姿がありました。
見たくない。思い出したくない――。
胸を抉るような辛い記憶が蘇り、コーリャは顔色を変えて身体を激しく震わせました。
けれどそれは過去の残像などではなく、彼にとって決して拭い去ることのできない残酷な現実として襲いかかってきます。
コーリャは弾かれたようにエレーナの元へ駆け寄り、冷たい床に膝をつきました。
弱々しく伸ばされた妻の手を、彼は縋りつくように両手で包み込み、固く握りしめます。
「エレーナ、ごめんよ……! 医者は、どこを探してもいなかったんだ。この戦争のせいで、みんな軍に連れて行かれてしまっていて……っ」
エレーナは朦朧とする瞳で夫の顔を見つめると、ふっと力無く笑い、弱々しい声で語りかけました。
「どうしたのコーリャ? そんなにひどい顔をして……」
「だって、エレーナ……君は……!」
暗い沈黙の中、コーリャはハッと我に返り、振り返りました。
温かかった灯火は影も形も消え去り、どんよりとした灰色の情景が部屋を包み込んでいます。
視線の先には、冷たいベッドの上に静かに横たわる妻エレーナと、その傍らで声をあげて泣きじゃくる、幼いナターシャの姿がありました。
見たくない。思い出したくない――。
胸を抉るような辛い記憶が蘇り、コーリャは顔色を変えて身体を激しく震わせました。
けれどそれは過去の残像などではなく、彼にとって決して拭い去ることのできない残酷な現実として襲いかかってきます。
コーリャは弾かれたようにエレーナの元へ駆け寄り、冷たい床に膝をつきました。
弱々しく伸ばされた妻の手を、彼は縋りつくように両手で包み込み、固く握りしめます。
「エレーナ、ごめんよ……! 医者は、どこを探してもいなかったんだ。この戦争のせいで、みんな軍に連れて行かれてしまっていて……っ」
エレーナは朦朧とする瞳で夫の顔を見つめると、ふっと力無く笑い、弱々しい声で語りかけました。
「どうしたのコーリャ? そんなにひどい顔をして……」
「だって、エレーナ……君は……!」