天使とケサランパサランの靴屋
 初めて見る彼の激しい泣き顔に、そばかすの天使は胸を痛め、家族三人の時間を作ってあげたいと願います。

 彼女はこれ以上下がれぬ壁に背を強く押し付け、身体を小さくこわばらせながらそっと距離を置くのでした。

「泣かないで、コーリャ。あなたは私を助けられなかったんじゃない。私の命を……私たちの家族の時間を、今日までずっと守ってくれたのよ」

 途切れることのないナターシャの泣き声と、堪えきれないコーリャの絶望の声。

 そばかすの天使は、自分が再び見せることになってしまった辛い過去の残酷さに、深く心を痛めていました。

 コーリャがナターシャを強く抱き寄せたその時、天使には、その瞬間が迫っていることが分かってしまいます。

 別れの時が刻一刻と近づいているのを感じ取ったそばかすの天使は、そっと家族の元へと歩み寄りました。

 最後の力を振り絞るようにして、エレーナは夫へ最後のお願いを口にします。

「コーリャ……私がいなくなっても、どうかナターシャと笑顔で前を向いていて。そうすれば、あなたの言うケサランパサランが風に乗って訪れ、きっと幸せを届けてくれるわ」

 コーリャは溢れ出る涙と押し寄せる悲しみに喉が詰まり、声にならない想いを抱えたまま、ただ頷くことしかできませんでした。
< 24 / 36 >

この作品をシェア

pagetop