天使とケサランパサランの靴屋
 やがて、視界を埋め尽くしていた眩しさが静かに引いていくのを感じ、彼が恐る恐る目を開けると――そこには、底の知れない暗闇の世界が広がっていました。

 静寂と闇に少しずつ目が慣れてきた頃、コーリャはすぐ目の前に、ぽつんと立ち尽くす人影があることに気づきます。

(誰だろう……?)

 彼が驚きとともに視線を上げた、その瞬間。

 遥か遠くの闇の底から、まるで星々が目を覚ますように、小さな光がひとつ、またひとつと灯り始めました。

 差し込む光の粒子が暗黒を優しく溶かし、空間全体を淡い薄明かりで満たしていきます。

 その幻想的な光の中に浮かび上がったのは、雪のように白い肌と柔らかな衣装を纏った、あのそばかすの少女の姿でした。

 彼女の背中から静かに広がる一対の白い翼を見て、コーリャは確信します。

「君は……ケサランパサランかい?」

 そばかすの天使は、慈愛に満ちた微笑みを浮かべ、ゆっくりと頷きました。

 コーリャの胸に小さな光が灯り、「もしかして」と縋るように言葉を繋ぎます。

「あの……オルゴールの天使様、なんだろう?」

 そばかすの天使は微笑みを崩さぬまま、今度は愛らしく、少しだけ首を傾げました。

 コーリャは、目の前に佇む少女の背中へと視線を移します。

 そこにある大きな白い翼――その片方が赤く汚れ、傷ついていることに気づきます。
 コーリャは息をのんで、その痛々しくも美しい翼を見つめました。

「……そうか。君は、飛べないんだね」

 かすれた声で呟く彼に、少女は言葉を返すことなく、ただ静かに微笑むだけでした。
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