天使とケサランパサランの靴屋
 そばかすの天使は問いには答えず、ただ「それはあなた次第だ」と告げるかのように、静かに微笑むだけでした。

 未来の光に、一瞬だけ瞳に生気を取り戻したかのように見えたコーリャでしたが、すぐに迫りくる弱気に呑み込まれるように、再び深くうつむいてしまいます。

「……わしはもう歳だし、十分に生きた」

 彼が力なく呟いた、その瞬間。

 ――バタン!

 目の前に浮かぶ光の扉の一つが、重い音を立てて冷酷に閉ざされました。部屋を照らしていた温かな光が、ひとつ消えてしまいます。

「足も悪い……この寂しい工房で、静かに生涯を閉じるとするよ」

 彼が後ろ向きな言葉を重ねるたび、それに呼応するかのように、またひとつ、またひとつと光の扉が無情に閉ざされていきます。

 そのたびに、彼の未来が削り取られていく。

 そばかすの天使は胸を引き裂かれるような苦痛に表情を歪め、激しく首を振りました。

(そんな考えじゃ駄目……! 諦めちゃ駄目だよ!)

 声にならない叫びをあげるように、彼女は細く儚い腕で、コーリャの肩を必死に揺さぶります。

 ついに最後の扉だけが残されたとき、天使の顔は溢れ出る涙で濡れていました。
 彼女が耐えきれずにコーリャの体を強く抱きしめ、半分諦めかけた、その時。

 最後の扉の向こうから、小さな、けれど確かな機械の音が響いてきました。

 完全に静まり返った暗闇の中、それは眠っていたゼンマイが今まさに動き出すような、「ジッ、ジジ……」という音でした。
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